おもちゃクリエーターとして活躍されている高橋晋平さん。これまでに「∞プチプチ」や「瞬間決着ゲームシンペイ」など、数多くのヒット商品を生み出してこられました。また、2月には売れる商品を作るためのメモ技術をまとめた『一生仕事で困らない 企画のメモ技』を出版。
その中で Evernote をメモに最適なツールとしてご紹介いただいています。高橋さんは Evernote をどのように活用されているのでしょうか。実際にお話を伺いました。
ずぼらな性格だからこそ Evernote が合っていた
――高橋さんは著書『企画のメモ技』の中で、ネタをメモするツールに Evernote をお使いと書かれています。数あるクラウドメモサービスの中から、なぜ Evernote を選んでいただいたのでしょう。
高橋:一番の理由は Evernote が真っ白なノートだからです。フォーマットが決まっていなくて、どう使ってもいい。それが私の性格に合っていました。もともとずぼらな性格なので、フォーマットが決められていると嫌になるタイプなんです。
――高橋さんがずぼらな性格というのは少々意外な感じがします。
高橋:いや、本当にそうなんですよ。デスクも片付いてないですし……。夢中になるととにかく熱中してしまって、まわりが見えなくなるタイプなんです。
――なるほど。だからこそ数々のヒット商品を生み出せるわけですね。もともとそういうタイプだったのですか?
高橋:子どもの頃は逆で、親の期待に応えようと勉強をがんばっていたし、きちんとしていたんです。ところが大学に入学して一人暮らしをしたら解放感で一気に反動がきまして(笑)。
――わかります(笑)。
高橋:落語研究会に入って面白い先輩方に囲まれて、「こんなのでもいいんだ」と思ったんです。それがおもちゃクリエーターとしての今につながっています。
入社から現在に至るまでのメモツールの変遷
――大学時代から“面白いこと”を考える現在の仕事の片鱗が現れていたわけですね。そしてバンダイに入社されました。
高橋:入社後、おもちゃの企画開発をする部署に配属され、アイデアを考える毎日でした。当時は何かネタがあればひたすら紙に書いてメモしていましたね。ただ、先ほど言ったようにずぼらな性格なので、せっかくメモした紙がすぐにどこかにいってしまってわからなくなってしまうんですよ。途中からは Word を使い始めたのですが、これも結局同じでした。ファイルが見つからなくなるんです。さらにローカル環境に保存していたので、PC を替えるタイミングでまたどこかにいってしまうという。
――せっかくのネタ帳なのにもったいない気がしますね。
高橋:その後、ちょっと手の病気をやってしまってメモがとりにくくなりました。その間、どうしようかなと思って音声メモを使っていた時期もありましたね。そういった経緯を経て最終的に行き着いたのが Evernote でした。
――Evernote はどのようなきっかけで?
高橋:最初に見たのは、たしか 2013 年ごろで、Evernote をはじめとした 3 つのクラウドサービスが便利だから使うべきという趣旨の記事をインターネットで読んだのです。さっそく入れてみたのですが、当時は会社でそうしたサービスが使えなかったこともあり、あまり活用できていませんでした。ですので、この時点ではネタは iPhone や iPad の標準メモアプリに書いて、メールで自分に送信するというやり方で保管していました。
2014 年 10 月に独立起業したのですが、Evernote を再び使うようになったのは、知人の熊山准さんというライターさんがきっかけです。熊山さんは Evernote のヘビーユーザーで、お会いしたときに「名刺管理といえば Evernote でしょ!」と猛プッシュされまして、それを機に私も使い始めました。最初は ToDo 管理で使い始めたのですが、Evernote の自由なフォーマットが性に合っていたようで、メルマガのネタや会いたい人、やりたいことなどもメモするようになっていきました。
脳は物事をすぐに忘れるので、メモはスピードが大事
――そういった経緯があったのですね。実際の使い方についても教えていただけますか。
高橋:『企画のメモ技』にも詳しく書いていますが、Evernote ではネタ帳メモをひとつ作って、そこに「自分がほしいと思ったもの」を書いていきます。これがアイデアのもとになります。人に見せるわけではないので、フォーマットも何もなくて、もうひたすら箇条書きでメモをとります。ネタは思いついた瞬間にメモしたいので、Evernote はスマホ 2 台と PC 2 台の合計 4 デバイスに入れて使っています。
ウェブからメモすることもあります。その場合は Inoreader という RSS リーダーから Evernote に保存して、後からネタ帳に転記し、クリップしたノートは消してしまいます。どんなネタでも、保管しておく場所は一箇所にすべきだと思っているからです。
――ネタを思いついてからメモされるまでのスピードを重視されているのですね。
高橋:そうですね。スピードはとにかく大事です。脳はすぐに物事を忘れてしまいます。私は枕元にもスマホを置いて寝る直前に思いついたことをメモできるようにしていますし、お風呂にはホワイトボードを置いてメモできるようにしています。
――何となくわかります。お風呂みたいにスマホを使えない環境に限ってアイデアが出てきたりするのですが、出る頃には「なんだっけ」となったりします。
高橋:そう、だからつねに最速でメモをとれるようにしておかないといけないのです。その意味で、様々なデバイスから使えて、真っ白なノートのようにフォーマットがない Evernote は最高のメモツールなのです。
――Evernote のネタ帳ノートは一つだけですか。
高橋:基本的には一つですが、メモが大量になってくると新しいノートに替えたりしますね。
――ネタが大量になると後で確認しにくいからですか。
高橋:というよりも、ネタが古くなるからという理由が大きいです。アイデアは「自分がほしいもの」と「仕事で与えられたお題」をかけ合わせて、Excel でブレストしながら考えます。「自分がほしいもの」というところが売れる商品を作るポイントなのですが、ほしいものってだんだん変わっていきますよね。以前はほしかったものも、今はもうほしくなくなっているかもしれない。それはもう「自分がほしいもの」ではないのです。ネタ帳には、つねに「今の頭の中」が反映されていないといけないので、ある程度ネタ帳が古くなったら新しいノートに替えるのです。
Evernote は発想の「型」を作りやすいツール
――なるほど。ToDo に関してはいかがですか。
高橋:こちらもフォーマットを細かく決めたりせずに、「今日」と「明日以降」、「メルマガネタ」に分けるくらいにして、やるべきことをずらっと書いていきます。一つのツールがネタ帳にも ToDo にも使えるのは、やはり真っ白なノートだからこそだと思います。
――Evernote の良さをどんなところに感じられますか。
高橋:やはり決まったフォーマットがないことですね。それからマルチデバイスでどの端末からも使えて、同期も速くストレスがないこと。道具にストレスがないと考えることに集中できます。それから、メモを管理しなきゃいけないというストレスがなくなったことでしょうか。Evernote は自分にとって「秘書のように、常にいてサポートしてくれる」存在です。
――同じように企画の仕事をされている方にメッセージをお願いします。
高橋:最終的にはアイデアを出すための「自分の型」を見つけることが大事です。Evernote は自由度が高く、そういった「型」を作りやすいツールだと思います。ずぼらな人には本当におすすめですよ。
――ありがとうございました。