1 月、新しい年が始まりました。決意も新たに、皆様に Evernote の取り組みの進捗状況と今後の計画についてご報告いたします。
1 年前、私が CEO に就任したての頃、Evernote が進化するためには、まず基礎の改善が必要であることをお伝えしました。そして、2019 年の目標を以下のように定めました。
- ユーザの皆様全員にとって不可欠な基本機能を改善し、より首尾一貫した統一性のある Evernote エクスペリエンスを創出する。
- ソフトウェアの開発手法および公開方法を変え、改善点や新機能をより高い品質で速やかにお届けできるようにする。
- Evernote を支えるコアインフラストラクチャを改善し、皆様の期待を満たすスピード、信頼性、拡張性を備えたサービスを提供する。
そして、嬉しいことに、Evernote はこれらの目標に向かって大きく前進することができました。昨年半ばにご報告したときよりも、さらに歩みを進めています(これについては後ほど詳述いたします)。
ただ、最初に率直にお伝えしておかなければならないのは、2020 年に入った現時点で、目標の達成には至っておりません。上記 3 つの目標を達成するために、越えるべき大きなマイルストーンがまだいくつか残っています。弊社のチームおよびユーザやパートナーの皆様が望む Evernote の姿には、まだ到達できていないのです。
この取り組みにおいて、現時点で大きな穴となっているのは、新しいモバイルアプリとデスクトップアプリを一般公開できていないことです。私の見積もりでは、当初の予定から 3 〜 4 ヶ月の遅れが出ています。これは弊社チームの努力やフォーカスが足りないからでは決してありません。ただ、最初に予測していたよりも越えるべき山が険しく、その道のりが平坦ではなかったのです。
その結果、「舞台の裏側」ビデオシリーズで紹介した新機能の多くが、まだ一般公開に至っていません。ユーザの皆様はがっかりされていることでしょうし、私たちも悔しさを感じています。一日も早く一般公開し、これらの基礎的改善の上にさらなるイノベーションを築いていけるよう引き続き邁進していく所存です。
ただ、昨年何も達成できなかったわけではありません。ユーザの皆様のご協力のもと、多くを実現することができました。ここで、2019 年のハイライトを振り返ってみたいと思います。
まず、Web 版で公開した新しいノートエディタには、非常にポジティブな反応が寄せられました。また、ベータ版テスト→フィードバックの収集→改善点の実装→改善分のリリースというプロセスもとても効果的でした。今回の新しいノートエディタのリリースは始まりにすぎません。今後数ヶ月の間にさらに改善していく予定です。
また、同じく Web 版で公開された新しい検索機能も非常に好評でした。こちらのリリースプロセスにも、ノートエディタのリリースで学んだことを生かしました。ベータ版のテスト期間中に、バグの修正だけでなく、機能の変更や関連性アルゴリズムの改良も行うことができました。さらに、新しい検索機能をデスクトップアプリでどのように実装するのが最善か、引き続きユーザの皆様のフィードバックを収集し、今後数ヶ月の間に一層の磨きをかけていく予定です。
加えて、「舞台の裏側」ビデオシリーズという、新しいコミュニケーションチャネルを開設し、弊社の取り組みを可視化して、プロセスの具体的な進捗をお伝えできるようにしました。ユーザの皆様がビデオから私たちのメッセージを受け取り、反応してくださったことは、チーム全員にとって大きな励みとなりました。皆様から寄せられたフィードバックのおかげで、改善点をリリースする前から、さまざまな軌道修正を行うことができました。
また、事業利益の面でも、Evernote は成長することができました。2019 年末の利用ユーザ数は年初よりも増加し、キャッシュフローを伸ばすことができました。健全な収支を保つことは一見地味なことのようですが、良好な経済状況を維持することにより、末長くユーザの皆様に製品をお届けすることが可能になるため、その意味で重要なハイライトだと言えます。
ここまで述べてきたことは、弊社を見守り続けてくださっているユーザの皆様なら、すでにご存知のことばかりかもしれません。そこで、まだお伝えしていない最近の達成事項についても少しお話ししたいと思います。
- 再設計したモダンな Web クライアント
- 再構築したモバイルクライアントの初回プレビューリリース
- クラウド上のデータ移行の成功
昨年 12 月に、完全に設計し直した Web クライアントを一部のユーザの皆様にリリースしました。そして(計画通り)ユーザの皆様がそれに気づくことはありませんでした。この新しい Web クライアントは、表面上は以前のバージョンとほとんど変わりがないように見えるのですが、実はクライアントとクラウドの通信を司る新しいコードライブラリを始め、内部のコードが大幅に変更されています(後ほど詳述します)。この再設計は、2019 年初頭に掲げた 2 番目の目標を達成するための大きな一歩です。誰にも気付かれずに、言うなれば古く錆びついてしまった土台をキラリと光る新しい土台に入れ替えるこの取り組みは、これまでのところ順調に進んでいます。Web クライアントをご利用の全ユーザに、新しいクライアントの実装が行き渡るまで、本年も引き続き段階的にリリースしていく計画です。
同じく 12 月に、抜本的に改良した iOS アプリと Android アプリの初回バージョンを、一部のベータテスターの皆様にリリースしました。12 月の「舞台の裏側」ビデオで紹介したこのベータ版は、革新的な変更を加えた Web クライアントと同様のデザインと機能を備え、弊社が 1 番目と 2 番目の目標をどのように達成しようとしているかがお分かりいただけるものになっています。もちろん新しいノートエディタと検索機能もモバイル画面に最適化された形で実装され、操作方法も統一し、どちらかのプラットフォームで行われていた変更は両方のモバイルアプリに適用されています(たとえば、タグ機能は iOS と Android の両方で基本的な機能として実装しました)。
上記の達成事項はどれも、ベータプログラムにご参加くださったユーザの皆様なしには実現することはできませんでした。皆様の期待やニーズにお応えできるアプリを開発するためには、率直なフィードバックが欠かせません。これからもどうぞ貴重なご意見をお聞かせください。機能面でもパフォーマンス面でもまだまだやるべきことが残っていますが、今後も引き続き新しいモバイルアプリを強化するビルドを段階的にリリースしていく予定です。
完全に再設計し直した Web クライアントと抜本的に改良されたモバイルクライアントでは、同じコードライブラリを使ってアプリとクラウドの通信を制御しています。これにより、すべての Evenrote アプリでコードベースと内部のアーキテクチャを統一することができました。これは、今後より良い Evernote エクスペリエンスをお届けする上で、非常に重要となる大きな一歩です。ユーザの皆様にとっては、どのプラットフォームで Evernote を使っても、同じ機能を同じ操作感でご利用いただけます(例えば、異なる端末でも同じ挙動で同期が行われます)。また私たちもテストしなければならないコードの量が減ったことで、バグを最小限に抑えることでき、バグが発見されたときにも、シンプルかつ迅速に修正することが可能となります。
最後に、(うれしいことに)お気付きになった方はいませんでしたが、11 月下旬より、ユーザの皆様のノートコンテンツはすべて、弊社クラウドのまったく新しいストレージシステムと同期されるようになりました。これにより 3 番目の目標達成に大きく近づきました。稼働中のサービスの 90 億を超えるノートを、誰にも気付かれずに別のアーキテクチャに移動するのは、言ってみれば走行中のバスのタイヤを交換するようなものです。技術的な話になってしまいますが、これまで何年にもわたり Evernote サーバのアーキテクチャを構成してきた古い共有アーキテクチャから、スケーラブルで横断的な「クラウド」への難しい移行作業でした。これについてはまだやるべきことが残っていますが(次に行うのは権限の共有です)、すべて終われば、さらなるイノベーションを阻んでいた大きな障害を取り除くことができます。過去数年にわたって Evernote の歩みを遅めていた問題と決別できるのです。
これら最近の達成事項は、昨年定めた 3 つの目標を達成するための基礎固めにすぎません。2019 年の時点で、ユーザの皆様には、いましばらくご辛抱いただきたいとお願いしました。そして現在、スケジュールに遅れが出てしまっています。2020 年にもお待たせしてしまうのは大変心苦しいのですが、ただもう発車間近であることは確かです。
再設計した Web クライアント(現時点で限定リリース)、新しいモバイルクライアント(現時点でプレビュー段階)、そして Windows、Mac、そして Linux(!)の新しいクライアント(現時点で未リリース)、クラウドで実行中のアーキテクチャ再構築とデータ移行。これらが終われば、その後は長期にわたり、かつてないペースで高品質の革新的な Evernote をお届けしていけるはずです。
そして、私が最も楽しみにしているのは(ユーザの皆様にとってもそうだと願いますが)、これらの基礎固めを終えた後なのです。基礎固めがゴールではありません。むしろ新しいレースの始まりです。Evernote でまったく新しい次世代のイノベーションと改善を実現していく——この新しいレースは静かに幕を開けつつあります。これについても、時が熟したら皆様に共有いたします。
皆様のご理解とご支援に心より感謝申し上げます。皆様に誇りに思っていただけるよう、そして信頼にお応えし、誰もが惚れ込む素晴らしい Evernote をもう一度届けられるよう、これからも一意専心で尽力してまいります。どうか私たちと一緒に、Evernote を #everbetter (さらに素晴らしいもの) にしてください。本年もどうぞよろしくお願いいたします。