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Evernote は誰がどのように管理しているのか——「信頼できるクラウドサービスの条件」とは。

7 月 11・12 日の 2 日間にわたり「Evernote Days 2014 Tokyo」をお台場の日本科学未来館で開催しました。Evernote が日本で開催するイベントとしては過去最大規模。各業界の第一線で活躍する多彩なゲストやスピーカーを迎えて、「記憶の未来」をテーマにさまざまなセッションが行われました。 これまでに以下のセッションをレポートしてきました。 脳科学者・茂木健一郎氏が語る「イノベーションの起こし方」 投資の世界で勝ち残るにはどうすればいいのか——投資家・藤野英人氏が語る記憶の未来とは ライフハッカー、ハフィントン・ポスト、WIREDの現役編集長が語ったウェブメディアの現状と将来 写真で振り返る Evernote Days アンバサダーセッション 東大寺が1200年の歴史で受け継いできたものとは——東大寺住職・森本公穣氏が語る「記憶の未来」 「未来へと記憶を伝えるために大切なのはビジョンを持つこと」——MIT メディアラボ副所長 石井裕 氏が語る記憶の未来 デジタルレシピ研究家・花岡貴子さんと声優のほたかけるさんが、女性にオススメの Evernote 活用法を伝授 Evernote はなぜ「モノ」を売り始めたのか。井上ジェネラル・マネジャーが語る、Evernote の未来。 「Evernote Business」の導入で、au損保がコストを大幅削減できた理由とは。 今回は、Evernote・佐藤真治、アイレット株式会社・後藤和貴 氏、Evernote・井上健によるセッション「信頼できるクラウドサービスの条件」をレポートします。 (左から)Evernote・佐藤真治、アイレット株式会社・後藤和貴 氏、Evernote・井上健 アイレット株式会社は、Web システムの開発や構築などを行っている企業で、特にアマゾン ウェブ サービス(AWS)の導入設計・運用・保守をトータルでサポートするクラウド運用に定評があります。 そんなクラウドサービスのプロフェッショナルである後藤さんは、「信頼できるクラウドサービスの条件」をどう見ているのでしょうか。 セッションはまず、日本企業にとったアンケート「クラウドサービスを使わない理由」の一覧からスタートしました。 クラウドサービスを使わない理由の1位は「必要がない」 それによると、クラウドサービスを使わない理由の 1 位は「必要がない」(41.2%)、そして 2 位:「情報漏洩などセキュリティに不安がある」(34.0%)、3 位:「クラウド導入に伴う既存システムの改修コストが大きい」(22.6%)と続きます。 後藤さんは、この結果から「アメリカに比べて日本はクラウドサービスを使ったことがある企業がまだ少ない。その分まだ伸びしろがあるので、アイレットもクラウドを扱っている」とクラウドサービスの展望を語ります。 一方で、Evernote 米国本社に勤務する佐藤は、「1 位の『必要がない』は面白い。必要がないのは理由ではなく、他に導入しない理由があるはず。だけど、それが特定できない、よくわからないということがあるから、必要ないという答えになるのでは」と分析。「クラウドサービスを導入することで、どれくらいのメリットがあるのか。日本では好まれないかもしれないが、お金に換算するとどれくらい節約できるのか、時間を節約できるのかまで、具体的に落としこんでいないのではないか」と述べています。 これに対して井上は、「まだまだクラウドに対する理解も進んでいないのではないか。経営陣の経営思想があまり戦略的ではなく、ガードしておけば余計な仕事が増えないと考えているのでは」とコメント。日本企業がクラウドサービスを敬遠しがちな理由について議論を行いました。 100%安全なものはない。重要なのはリカバリー方法を考えておくこと。 佐藤は「セキュリティに対する不安も大きい」といいます。 「クラウドサービスは安全なのかと問われれば、100% 安全なものなんて世の中にはない。どんなシステムでもそうで、そうなったときどうするか、リカバリー方法を考えておくことが重要」(佐藤) この意見に「それは Amazon も同じ」だと、後藤さんも同意しています。 「世界の 11 箇所にデータセンターがあり、そこにサーバを置くことはできる。片方が落ちても片方が動いて、データのバックアップができるようになっている。壊れるかもしれないけど、壊れたときの設計をきちんとしている」(後藤さん) セキュリティに関しては、結局のところ、安全性と利便性、コストの面でバランスをとっていくことになると 3 名は口をそろえていいます。「自動車や飛行機はまさにそうで、安全性と利便性のバランスをとっている」(佐藤) ディスカッションの話題は、先日起きたベネッセの情報流出の話にも及びました。 佐藤は、「ベネッセの問題は人だった。セキュリティの問題ではあるが、クラウドとは無関係。クラウドを使おうが使わまいが問題はある。ベネッセの対策が不十分だった部分はあったのでは」と述べ、さらに「(情報流出には)気づかない人も多い。優秀なハッカーであればあるほど証拠は残さない」とコメントしています。 Evernote がユーザに確約した「データ保護の三原則」

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「Evernote Business」の導入で、au損保がコストを大幅削減できた理由とは。

7 月 11・12 日の 2 日間にわたり「Evernote Days 2014 Tokyo」をお台場の日本科学未来館で開催しました。Evernote が日本で開催するイベントとしては過去最大規模。各業界の第一線で活躍する多彩なゲストやスピーカーを迎えて、「記憶の未来」をテーマにさまざまなセッションが行われました。 これまでに以下のセッションをレポートしてきました。 脳科学者・茂木健一郎氏が語る「イノベーションの起こし方」 投資の世界で勝ち残るにはどうすればいいのか——投資家・藤野英人氏が語る記憶の未来とは ライフハッカー、ハフィントン・ポスト、WIREDの現役編集長が語ったウェブメディアの現状と将来 写真で振り返る Evernote Days アンバサダーセッション 東大寺が1200年の歴史で受け継いできたものとは——東大寺住職・森本公穣氏が語る「記憶の未来」 「未来へと記憶を伝えるために大切なのはビジョンを持つこと」——MIT メディアラボ副所長 石井裕 氏が語る記憶の未来 デジタルレシピ研究家・花岡貴子さんと声優のほたかけるさんが、女性にオススメの Evernote 活用法を伝授 Evernote はなぜ「モノ」を売り始めたのか。井上ジェネラル・マネジャーが語る、Evernote の未来。 今回は Evernote 積田英明と、au損害保険株式会社 柳保幸 氏によるセッション「Evernote Business が作る新しいワークスペース – au損保に見る業務革新の条件」をレポートします。 「蓄積」「発見」「協力」「伝達」が Evernote の4つの軸 まずセッションに登壇したのは、Evernote の積田英明。自身も Evernote ユーザとして、仕事で気になったアイデアや提案書、プライベートの様々な情報を蓄積しているという積田は、Evernote を 4 つの軸に分けて解説します。 ・蓄積(知識・情報を蓄積) ・発見(強力な検索機能) ・協力(ノートブックの共有) ・伝達(プレゼンテーションモード) この 4 項目こそが、仕事を効率的に進める上で Evernote が重要なツールとなる理由だと積田は語ります。 「社内の打ち合わせなのに、Keynote や PowerPoint で資料を作成したりしていませんか? そうした時間を有効活用するために、Evernote では蓄積した情報を美しく表示することを可能にしています」 そうした「仕事における Evernote」をさらに推し進めたものが、Evernote Business です。個人のアカウントをそのまま利用できる Evernote Business は、現在 1

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デジタルレシピ研究家・花岡貴子さんと声優のほたかけるさんが、女性にオススメの Evernote 活用法を伝授

7 月 11・12 日の 2 日間にわたり「Evernote Days 2014 Tokyo」をお台場の日本科学未来館で開催しました。Evernote が日本で開催するイベントとしては過去最大規模。各業界の第一線で活躍する多彩なゲストやスピーカーを迎えて、「記憶の未来」をテーマにさまざまなセッションが行われました。 これまでに以下のセッションをレポートしてきました。 脳科学者・茂木健一郎氏が語る「イノベーションの起こし方」 投資の世界で勝ち残るにはどうすればいいのか——投資家・藤野英人氏が語る記憶の未来とは ライフハッカー、ハフィントン・ポスト、WIREDの現役編集長が語ったウェブメディアの現状と将来 写真で振り返る Evernote Days アンバサダーセッション 東大寺が1200年の歴史で受け継いできたものとは——東大寺住職・森本公穣氏が語る「記憶の未来」 「未来へと記憶を伝えるために大切なのはビジョンを持つこと」——MIT メディアラボ副所長 石井裕 氏が語る記憶の未来 今回はその中から、Days 2 に行われた Evernote 女史会の模様をレポートします。 日本の Evernote ユーザ女性比率は 20% 弱 Evernote 女史会は、そのセッション名の通り、3 名の女性 Evernote ユーザによる対談企画。デジタルレシピ研究家の花岡貴子 氏と声優のほたかける 氏、そして Evernote マーケティングの上野美香が登壇しました。 (左から)Evernote 上野、声優・ほたかける 氏、デジタルレシピ研究家・花岡貴子 氏 まずはお二人のプロフィールから紹介しましょう。花岡貴子さんはデジタルレシピ研究家として活躍される一方、Evernote に関する書籍も多数執筆されており、その他、競馬評論家、プログラマー、ライター、ファイナンシャルプランナーなど、様々な分野でご活躍です。 そして、ほたかけるさんは、CM やゲームなど様々なジャンルで活躍されている声優さん。学生時代から Evernote のヘビーユーザとのことで、Evernote 日本語ブログでも過去にほたかけるさんの使い方を取材させていただいたことがあります。 最後に、Evernote から上野美香。Twitter の日本でのマーケティング、ブログメディアでの編集長を歴任し、現在は Evernote でマーケティングを担当しています。 そもそもなぜ今回「Evernote 女史会」が催されたのか。 実は日本の Evernote ユーザは男性に偏っており、その比率はだいたい 2:8。もっと女性にも Evernote を使っていただきたいという思いから、今回の女史会開催に至ったというわけです。 そこでまずは、花岡さんとほたさんそれぞれの Evernote との出会いについて伺いました。 女性にとっての

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「未来へと記憶を伝えるために大切なのはビジョンを持つこと」——MIT メディアラボ副所長 石井裕 氏が語る記憶の未来

7 月 11・12 日の 2 日間にわたり「Evernote Days 2014 Tokyo」をお台場の日本科学未来館で開催しました。Evernote が日本で開催するイベントとしては過去最大規模。各業界の第一線で活躍する多彩なゲストやスピーカーを迎えて、「記憶の未来」をテーマにさまざまなセッションが行われました。 これまでに以下のセッションをレポートしてきました。 脳科学者・茂木健一郎氏が語る「イノベーションの起こし方」 投資の世界で勝ち残るにはどうすればいいのか——投資家・藤野英人氏が語る記憶の未来とは ライフハッカー、ハフィントン・ポスト、WIREDの現役編集長が語ったウェブメディアの現状と将来 写真で振り返る Evernote Days アンバサダーセッション 東大寺が1200年の歴史で受け継いできたものとは——東大寺住職・森本公穣氏が語る「記憶の未来」 今回は、MIT メディアラボ副所長 石井裕 氏による DAYS 2 基調講演「未来記憶」をレポートします。 『人間が歴史から学んだことは、歴史から何も学んでないということだ』 石井さんは 1956 年生まれ。北海道大学大学院修士課程修了後、電電公社(現 NTT )、西ドイツの GMD 研究所客員研究員、NTT ヒューマンインターフェース研究所などを経て、1995 年よりマサチューセッツ工科大学準教授に就任、現在は MIT メディアラボ副所長を務めています。 この日も Evernote Days のためにボストンから来日されたという石井さんの講演は、2011 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災の話題からスタートしました。 「まだ生々しく残っている、3.11 の記憶。いかに過去を語り継ぎ、啓蒙するかが大切なことです」 そう切り出した石井さんは、東日本大震災について一旦「想定外」「未曾有」と表現しながらも、すぐに「(想定外というのは)嘘です。(震災は)想定されていた」と「想定外」を否定します。 「過去に何度も同じレベルの震災があった。でも結局、人々はそれを忘れてしまいました。風化した石碑『大津浪記念碑』には 1896年 と 1933 年の三陸大津波を生き延びた先人たちの知恵が刻み込まれていました。『高き住居(すまい)は児孫(こまご)に和楽(わらく)、想へ(おもえ)惨禍(さんか)の大津浪(おおつなみ)、此処(ここ)より下に家を建てるな。』と。伝承があったにも関わらず、なぜ忘れてしまったのか」 石井さんはその理由として、ウィンストン・チャーチルの言葉、『人間が歴史から学んだことは、歴史から何も学んでないということだ』を挙げています。 「結局、忘れてしまう。記録がないからではなく、リマインドしていないのです。次に来る震災に備えないといけません」 母のために作った「musicBottles」とTwitter 今回のテーマでもある「未来記憶」とは、次の世代にいかに伝えていくか、ということ。石井さんはここで、1999 年に自身が発表された「musicBottles」(ミュージックボトル、音楽の小瓶)を紹介し、次のように述べています。 「これはオンラインのデジタルコンテンツの入れ物としてデザインしました。ガラスなので、落ちると壊れます。リブートできない。それがひとつの美しさの要因でもあります。この『musicBottles』プロジェクトは、母へのプレゼントというパーソナルな理由でスタートしました。母は今日の天気を知りたくて TV を見ます。でも、そうではなくて、ブルーの小瓶を枕元に置いてあげたかった。瓶から小鳥のさえずりが聞こえれば天気は晴れだとわかるのです」 しかし、石井さんの母は「musicBottles」を見ることなく、1998 年に亡くなります。 「悲しいことは忘れてしまうんです。命日とお盆くらいしか思い出さなくなる。そこで僕は母の Twitter アカウントを作りました。母は和歌をたくさん残していて、それを Twitter でつぶやく

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東大寺が1200年の歴史で受け継いできたものとは——東大寺住職・森本公穣氏が語る「記憶の未来」

7 月 11・12 日の 2 日間にわたり「Evernote Days 2014 Tokyo」をお台場の日本科学未来館で開催しました。Evernote が日本で開催するイベントとしては過去最大規模。各業界の第一線で活躍する多彩なゲストやスピーカーを迎えて、「記憶の未来」をテーマにさまざまなセッションが行われました。 これまでに以下のセッションをレポートしてきました。 脳科学者・茂木健一郎氏が語る「イノベーションの起こし方」 投資の世界で勝ち残るにはどうすればいいのか——投資家・藤野英人氏が語る記憶の未来とは ライフハッカー、ハフィントン・ポスト、WIREDの現役編集長が語ったウェブメディアの現状と将来 写真で振り返る Evernote Days アンバサダーセッション 今回は、東大寺塔頭清凉院 住職・森本 公穣 氏によるセッション「東大寺1200年の記憶」をレポートしていきます。 森本さんは 1968 年、東大寺に生まれ、15 歳で得度。龍谷大学大学院仏教学専攻博士課程を修了された後、大仏殿副院主、東大寺図書館副館長、東大寺福祉事業団常任理事などを経て、現在東大寺学園常任理事を務めておられます。もちろん、以前からの Evernote ユーザでもあります。 そんな森本さんによるセッションはまず、東大寺の基本的な紹介からスタートしました。 東大寺はどのようにして創建されたのか 東大寺は言わずと知れた古都奈良の文化財にして、世界遺産の一つ。世界最大の木建造物である東大寺大仏殿や、「奈良の大仏」として知られる盧舎那仏(るしゃなぶつ)はあまりにも有名です。しかし、東大寺は「寺」という名称ではあるものの、皆さんが想像するような一般的なお寺とは少し違うものだと森本さんは言います。 「東大寺ではお葬式もしませんし、お墓もありません。仮に東大寺の僧侶が死んでも、お葬式はよそのお寺にお願いすることになります。じゃあ東大寺は何をしているのか。東大寺はもともと、仏教を学ぶ場所であり、すべての生命の繁栄を願う場所として作られたお寺なんです」 時を遡ること1200年。8 世紀の半ば、聖武天皇により創建された東大寺には、「動植咸(ことごと)く栄えむとす」という言葉が「大仏造立の詔」として残されています。これは一般企業でいうところの「創業理念」のようなものであると森本さんは述べています。 「意味は、動物と植物すべてが栄える世の中にしたいということ。聖武天皇はまた、『それ、天下の富を有(たも)つは朕なり。天下の勢を有(たも)つは朕なり』という言葉も残しています。為政者がただ決めて何かを作るのであれば、それは無駄な公共事業にすぎません。東大寺創建がそんなことになってはならない、理念を共有して心をひとつにしてやっていくのが大事だと聖武天皇は考えたのです」 なぜ東大寺が建てられたのか。その理由は当時の時代背景にありました。奈良時代は華やかなイメージがある一方で、旱魃や飢饉、病気、政変、地震、皇太子の死など、数々の不幸に見舞われた時代。聖武天皇はこれらの天災に対し、「責めは予一人に在り」(私に責任がある。私に力がないために天が味方してくれないのだ)と述べており、救いを求めて仏教を学ぶことにしたのだといいます。 「奈良時代の日本全体の人口は五百数十万。そのうち約半数にあたる260万人が聖武天皇の呼びかけに応じて協力し、大仏が完成しました。天皇が言うから協力するのではなく、自分で考え、それぞれが判断して協力したのです。奈良の大仏はそうやって生まれました」 東大寺、その復興の歴史と人々の思い。 天平勝宝 4 年(752)4 月 9 日、大仏開眼供養会が行われます。供養会では僧侶が仏の前で筆を持ち、目を書き入れる仕草をするのが作法となっていましたが、このとき使われた筆と、それに結び付けられていた紐は、なんと 1200 年を経た今でもそのままの形で正倉院に保管されています。 「その後、東大寺は二度焼かれています。最初に焼かれた際、東大寺を復興させたのは重源上人。この方は『尺布寸鉄一木半銭』というキャッチコピーを考えて、人々に復興協力を求め、25年にわたって東大の復興に尽くしました。南大門にある金剛力士像も、重源上人の時代に作られたものです。二度目は戦国時代、松永久秀という武将により、東大寺は再び焼かれました。これを復興したのは、当時37歳だった公慶上人です。公慶上人は復興のための基金を集める托鉢を行い、京都を一軒一軒訪ね歩いて仏の教えを説き、協力を頼みました。公慶上人は上棟式が終わったタイミングで亡くなったのですが、あとを引き継いだ弟子たちが大仏殿を完成させ、そちらへ向けて公慶堂を造ったのです」 公慶上人の思いを引き継ぎ、東大寺を復興させた弟子たち。森本さんはそこに「先人の思いを受けて、後の人たちのために何をしていくか」というテーマを見出します。そのために重要なのは「どんなことがあってもやめない」ということ。それこそが、今回のイベントのテーマでもある、『記憶の未来』にも通じるのだと森本さんは言います。 「牛玉誓紙(ごおうせいし)という紙があります。これは戦国時代からずっと、東大寺の僧侶の名前が書き連ねられている記録で、私の父の名前も、私の名前も記されています。東大寺が建てられてから、たくさんの僧侶が亡くなったり焼け死んだりしました。困難だった時代でも一生懸命にやってきたことが、今の私たちにわかるような形で残されています。私自身もこうやって記録された文書から話を受け継いで、伝えていきます」 後世の人たちに何を残していけるか。それこそが「記憶の未来」 756年、聖武天皇が亡くなった後、光明皇后は600点あまりの品々を大仏に献納しました。その中には様々な宝物があり、1200年を経た今でも正倉院展などで公開され見ることができます。 大仏の台座の下には「蓮華蔵世界」という絵が彫られています。この絵が意味するところを、森本さんは次のように解説しています。 「私たちはすべて心で成り立っている。心は優れた絵描きのように様々なものを描き出します。心をどのようにしっかりもって、人々にいろんなものを伝えていくか。それがちゃんとわかるようになれば、私たちの心はより良い未来を作るのです」 私たちもいずれは亡くなります。そのとき、後世の人たちに何を残していけるか。それこそが「記憶の未来」なのだという言葉で、森本さんはセッションを締めくくられました。

写真で振り返る Evernote Days アンバサダーセッション

7 月 11・12 日の 2 日間にわたり東京で行われた「Evernote Days 2014」では、メインとなる未来館ホールや、イノベーションホールでのセッションの他に、Evernote ユーザの代表である Evernote アンバサダーのみなさんの多岐にわたるセッションも実施されました。 アンバサダーのみなさん自身がそれぞれまとめた記事へのリンクとともに写真を見ながらセッションを振り返ってみます。 「共働きを快適にする Evernote 活用術」 1 日目のテーマは「Work」。 Evernote 整理収納アンバサダー小西紗代さんと Evernote 家事効率化アンバサダー本間朝子さんのセッションでは、共働きだったりお仕事に追われて毎日忙しい暮らしをしていても快適に過ごせる家づくりのコツをご紹介いただきました。 夫婦円満の秘訣はEvernoteにあり!ノートを共有して家事の効率化を図ろう! | Softonic お子さんの学校でもらった書類やハガキなどだけでなく、押し入れやクロゼット、収納の様子を写真に撮って Evernote に保存することで探す時間や忘れ物を減らしたり、買い物リストや収集したレシピ、洗濯物の手順まで夫婦や家族で共有する例は、誰もが身近に感じたのではないでしょうか。 小西さんの記事: 記憶の未来@iPhone講座 「Evernoteを最強の営業ツールに」 Evernote スモールビジネスアンバサダー川添祐樹さん、Evernote 仕事効率化アンバサダー堀江賢司さんのセッションでは、Evernote を実際にお仕事に活用している営業マンのお二人が、実体験を交えてプレゼン。 Evernoteを最強の営業ツールにする方法をアンバサダーに聞いてきた | BITA 仕事に関するネタ帳としてのメモやクリッピングから FAX や名刺、年賀状の管理、店舗運営マニュアルや出張報告書まで、Evernote 以外のツールとの組み合わせや使い分けを交えて実際のノートを見せながらの説明には説得力があります。 川添さんの記事: 【レポート】「EVERNOTEを最強の営業ツールに」に登壇(Evernote Days 2014 TOKYO) 堀江さんの記事: Evernoteは最強の営業ツールになるのか? #EvernoteDays 2014で感じたこととこれから 「アンバサダーに聞こう〜仕事につかえる Evernote 術」 1 日目最後の枠では、Evernote のアプリが出た初期の頃から使っている Evernote ブログ・バッグアンバサダーのいしたにまさきさん、Evernote 知的生産アンバサダー倉下忠憲さん、Evernote ブログアンバサダーのコグレマサトさんが、三者三様の使い方をシェアして下さいました。 EvernoteDays 一日目 「アンバサダーに聞こう − 仕事につかえるEvernote術」のまとめ #EvernoteDaysアンバサダー質問 | togetterまとめ ライトな使い方をしているコグレさんは、ブログ記事を書き上げたらそのために作ったノートは削除してしまうので、ノートの合計数は 1,000

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ライフハッカー、ハフィントン・ポスト、WIREDの現役編集長が語ったウェブメディアの現状と将来

7 月 11・12 日の 2 日間にわたり「Evernote Days 2014 Tokyo」をお台場の日本科学未来館で開催しました。Evernote が日本で開催するイベントとしては過去最大規模。各業界の第一線で活躍する多彩なゲストやスピーカーを迎えて、「記憶の未来」をテーマにさまざまなセッションが行われました。 これまで脳科学者・茂木健一郎氏の講演、投資家・藤野英人氏の講演をレポートしてきましたが、今回は DAY1 に開催されたセッション「編集長会議 — 記録と記憶。メディアが僕たちの暮らしに残せるもの」をレポートします。 本セッションに登壇したのは、ライフハッカー[日本版]編集長・米田智彦 氏、ハフィントンポスト日本版編集長・松浦茂樹 氏、WIRED編集長・若林恵 氏という豪華なメンバー。モデレーターは Evernote より上野が務めました。日本を代表するネットメディアの編集長の皆さんは、記録と記憶の未来に何を見据えているのでしょうか(以下、敬称略)。 (左から)Evernote 上野、ライフハッカー[日本版]編集長・米田智彦 氏、ハフィントンポスト日本版編集長・松浦茂樹 氏、WIRED編集長・若林恵 氏 ライフハッカー、ハフィントン・ポスト、WIRED、それぞれの特徴と考え方 若林(WIRED):まずはこのページを見てください。これは WIRED での映画「トランセンデンス」の特集なんですが、雑誌の誌面のようにデザインしているんですね。僕はもともと紙出身で、ウェブに移ってからも WordPress にテキストと写真を流し込んでいくだけっていうのがつまらないなって最近とみに感じるんです。紙でテンションが上がるのって、デザインされて上がってくるところ。初めて色校が出てきたときの感動はすごかったです。デザインした形で表現されることの面白さがあるんですね。そこで、ウェブでも一つひとつの記事にデザインをかませようとしたのがこのページ。1 万 4,000 字くらい分量があって、評判もそれなりに良かった。映画の特集なんですが、映画よりもたぶん面白いんですよ(笑)。映画よりも、映画の記事の方が面白いという風にさせるのが、僕ら編集者の仕事だと思います。 米田(ライフハッカー):WIRED のこのページが、いわゆるブログメディアとは違うものを作ろうとしたんだろうなってことはすぐわかりますよね。ライフハッカーは SmartNews のようなキュレーションメディアとどう戦うのか、どう折り合うのかって言われることが多いんですが、ぜんぜん違うものだと思ってます。キュレーションメディアって淘汰が進んで、栄枯盛衰の時代。2、3 年後はどうなるかわからないし、自分たちとしてはもっと長いスパンでコンテンツを作り続けていきたいですね。 松浦(ハフィントン・ポスト):ハフィントン・ポストの場合はデータを買ってきてアグリゲーションして表現するわけですが、どこから買うかというと、日本なら時事通信や共同通信から買ってくるわけです。それにソーシャル上の味付けをする。お客様が何を求めているかを考えて、想定される材料を用意しておいてすぐに渡せるような感じですね。お客様のニーズはソーシャル上から考えます。媒体ごとにそれぞれのブランドの味付けがあって、ハフィントン・ポストだとこういう味付けになる、と。 米田(ライフハッカー):ライフハッカーは、ウェブを読む時間を消費ではなく、投資の時間にしてほしいという思いがあります。若林さんはデザインの上がったときに感動を覚えたって言われましたけど、僕らは「いいね!」が 1 万を超えることに対しての震えや感動を目指して編集者として作っていく感じですね。 消費されるウェブ情報に抗いたい 若林(WIRED):ただ、「いいね!」とか、PV を追いかけることってどうなのかなと思いながらやっているんですよ。たとえばさっきのトランセンデンスの記事は PV が 3〜4 万。だけど、読者の滞在時間が 15 分とかあるんですね。ライフハッカーやギズモードなど、広告を出すってなると、競合してPVでは負けてしまう。じゃあ PV でいいのかと。読者に何を提供するのかを、もっと言語化しないとダメだろうなと。 米田(ライフハッカー):滞在時間 15 分ってすごいですよね。僕は以前、ゲストハウスの記事を書いたんですが、7,800 いいねくらいで、PV は 5 万くらいかな。実はこれタイアップの広告記事なんですよ。ゲストハウスをやっている若者 4 人組の話なんですが、僕は彼らと立ち上げ時からの知り合いで、口コミを重視していてあまり報道されたくないってことで、僕らだからこそ話してくれたんです。そうすると滞在時間は他の記事の数倍、6 分とかになりました。僕らとしては広告記事を、普通の記事の 4〜5 倍くらい労力をかけて面白くしているわけで、広告とは思えないような記憶に残る記事にしたいですね。長い記事、短い記事とある部分でいうと、ウェブって長い時間には適していないと思うんですよ。紙の方が記憶に残る部分はあります。 若林(WIRED):ウェブは読者の興味が移り変わっていって、滞在させるのが難しいし、記憶に残る記事は作れるのかどうか。ウェブはフロー型で情報で早く回転するので、そういうものには向かないと言われていて、その前提に則って運用されてきたけど、それは本当なのか?ウェブで記憶に残る記事の作り方は本当にないのかを問いたいです。 米田(ライフハッカー):そこは僕も紙出身で、消費されるウェブ情報には抗いたいと思っていて、読者の記憶に何とかフックをかけたいと思っています。読者としては、Evernote のような外部記録媒体に記録して後で読めばいいというのが深層心理であって、ちゃんと読まないということもあるでしょう。だけど、じっくり最後まで読んでもらって読み返してもらえる記事を作れないのか。それは

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投資の世界で勝ち残るにはどうすればいいのか——投資家・藤野英人氏が語る記憶の未来とは

7 月 11・12 日の 2 日間にわたり「Evernote Days 2014 Tokyo」をお台場の日本科学未来館で開催しました。Evernote が日本で開催するイベントとしては過去最大規模。各業界の第一線で活躍する多彩なゲストやスピーカーを迎えて、「記憶の未来」をテーマにさまざまなセッションが行われました。 20 を超えるセッションの中から、前回は脳科学者・茂木健一郎氏の講演内容をご紹介しましたが、今回は、レオス・キャピタルワークス株式会社 取締役・最高投資責任者(CIO)藤野英人 氏による基調講演「投資家が語る記憶の未来 “Memory is Money?”」をレポートします。 藤野氏は 1990 年に早稲田大学法学部を卒業後、野村投資顧問(現 野村アセットマネジメント)に入社され、ジャーデン フレミング投信・投資顧問(現 JP モルガン・アセット・マネジメント)、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントを経て、レオス・キャピタルワークスを設立。大学講師としても活動しながら投資や会社経営などに関する書籍を多数執筆されるなど、多方面で活躍されている投資家です。 そもそも「投資」とは何でしょうか。 藤野さんは「Bulls & Bears」(牛と熊)という言葉で「投資」を表現します。 「ニューヨーク証券取引所の入り口には牛と熊の像が建てられています。牛は攻撃するとき、下から上に突き上げて、熊は上から下へと腕を振り下ろしますよね。これは株価を表しているんです。牛は強気で熊は弱気を表しているんですよ。株は”買い”と”売り”が結合しないと売買が成立しません。牛と熊が死闘を繰り広げる。これが”マーケット”なんです。もっとも、株式市場には 3 匹目の動物——ダック(鴨)——がいるとも言われていますけどね」 牛と熊、すなわち”買い”と”売り”がマーケットを形成する株式市場ですが、藤野さんは「マーケットは宇宙」という認識を持っているそうです。 「日本だけでも 3,550 社が上場しています。世界のあらゆる情報が株式市場にあり、株価が毎日上下する様はまるで宇宙です。宇宙を相手にどう立ち向かい、あるいは共存して株式投資を成功させるのか。2000 年頃からインターネットが本格的に普及して、お金が世界をぐるぐる回るようになりました。投資の世界においてグローバル化の進展は、ネットの普及と強い関係があります。投資とインターネットの世界はどんどん結合していて、IT サイドの人が投資の世界に入ってくることもあるし、その逆もあります」 インターネットと結びついて、グローバル化が進んだ投資の世界。そんな混沌とした世界でも、毎年のように成功する投資家がいると藤野さんは言います。たとえばジム・ロジャーズやウォーレン・バフェット、ジョージ・ソロス、ピーター・リンチといった人々です。一般的に「ギャンブル」だと思われがちな投資の世界で、なぜ彼らは勝ち続けることができるのでしょうか。 「どんなに成功している投資家でも、一瞬にして破綻することはあります。たとえば 2005 年のクリスマス前後には、ホリエモンバブルがありました。2006 年 1 月にホリエモンが逮捕されて、株式市場に変調が起きました。一攫千金の夢もあるけど、失敗するとすべてを失う可能性もあるのが株式投資です。しかし、その中でも長期的にリターンを得ている人がいます。まぐれかもしれませんが、しかし運だけで成功はできません。一発だけ成功しても継続は難しい。だからこそ、彼らからは学ぶことがあるのです」 株価の変化で利益を上げていくのが株式投資。ではそのためにどういう情報が必要なのでしょうか。藤野さんは、株式投資について具体的に 2 つの分析があると説明します。 「一つはチャート分析。株価の動きや形に注目するやり方です。もう一つはファンダメンタルズ分析。会社の会計など数量化できる情報を集めて、会社の本質を見極め投資するやり方です。そして最近、3 つ目のやり方が出てきています。Twitter や Facebook での言葉を見て投資をする方法です。ネガティブな言葉が増えてくると株価が下がり、ポジティブな言葉が増えてくると株価が上がると判断して投資を行うのです。これが第三の波として、大きな成果を上げつつあります」 では、R&I ファンド大賞を 3 年連続で受賞するなど輝かしい実績を持つ藤野さん自身は、どんな方法で投資を行っているのでしょうか。藤野さんは、自らの投資哲学を「長期的には利益と株価は一致する」という言葉で表します。 「EPS(会社の利益)× PER(株価収益率)という式がありますが、多くの人は PER を気にします。しかし、日経平均の予測を当て続けられる人はいません。私はそうではなく、この会社は伸びるのではないかという予測をしています。というのも、長期的に見ると、営業利益のトレンドと株価のトレンドはほぼ一致するからなんです。伸びている会社を見つけるのも難しいのですが、日経平均を予測するよりは簡単です。成長する会社に投資をすることが成功の秘密です。投資は日経平均の先行きを占うギャンブルではないのです」 成長する会社を見極めることが投資のカギであると語る藤野さんは、原則として「社長に会って投資をするかどうかを決める」そうです。しかし、ここでもう一つの重大な問題があると言います。 「社長は嘘をつくものなんです。嘘といっても様々で、誇張することもそうですし、本来言わなければいけないことを言わないというのも、広い意味では嘘です。IR 担当者も嘘をつきます。なぜなら会社のことを良く思ってもらいたいから。情報とはそういうものなのです」 藤野さんは「人間は自分に嘘をついて記憶を書き換える。メモリーはファクトではない」と言います。 「社長にインタビューしても、社員に会社のことを聞いたとしても、そこにはファクトの一部しかありません。多くの人たちが少しずつ本当のことを話し、少しずつ嘘をつくからです。大事なのは、そこに”確からしさ”を求めることです。ケインズの言葉で、『玄人の投資は、投票者が 100 枚の写真の中からもっとも美しい 6 人を選び、その選択が投票者全体の平均的な好みにもっとも近かった者に賞品が与えられる美人投票に見立てることができる』というものがあります。投資は、”皆が美人だと思うものを当てないといけない”のです」 最後に投資の極意について、藤野さんは次の

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さまざまな場所で活躍するスタッフの情報共有とコミュニケーションを Evernote Business がサポート

レザースーツなどのバイク用ウェアで知られる株式会社クシタニ。「KUSHITANI」ブランドの高い品質は、世界の GP(グランプリレース)ライダーから個人まで幅広い愛好家たちを魅了しています。同社では全員が Evernote のアカウントを持ち、Evernote Business を中心にあらゆる社内の情報共有を行うことで、業務の効率化と社内コミュニケーション促進を実現しています。 社員全員がアカウントを持ち全情報を Evernote で共有 株式会社クシタニ(以下、クシタニ)における Evernote 活用の特色は、社員全員がアカウントを持っていることです。同社では、特に社外秘とされる資料を除いたほとんどの情報を Evernote Business 上に公開。経営陣や管理職から全国の店舗スタッフまでが必要に応じて閲覧、共有できる仕組みを提供しています。現在は管理担当者を中心に 9 名が「Evernote Business アカウント」、営業担当者を中心に 10 名が閲覧・編集権限やファイル容量およびノートブック数が強化された「プレミアムアカウント」、そして残りの全社員、約 30 名が保存・閲覧のみ可能な「無料アカウント」を持っています。 同社が初めて Evernote を導入したのは 2010 年。それ以前にも他のグループウェア製品を導入したものの、スケジュール管理が主体で、業務で扱う各種ファイルが添付できないといった問題がありました。そこでより使いやすいツールを探していたところ、Evernote が目にとまったと、同社の広報部 櫛谷 信夫氏は語ります。 (左から)株式会社クシタニ 広報部 櫛谷 信夫さん・株式会社クシタニ 世田谷店スタッフ 藤野 亜弓さん 櫛谷「どんな形式のファイルでも簡単に保存・共有できるところが評価のポイントでした。今では、業務に必要なすべてのファイルが Evernote Business 上に置かれています」 出勤簿や各店舗の売上報告書などもすべて Evernote Business 上に保存しているため、社員は毎日使用するうちに自然と操作を覚え、IT ツールの導入時にありがちな利用頻度や習熟度のばらつきもなく全社的に定着することができたといいます。 社内外への情報発信ツールに Evernote Business を活用 Evernote Business 導入以前から約 3 年間、「プレミアムアカウント」と「無料アカウント」のみで業務を大きく効率化してきた同社が、さらに Evernote Business の導入を決めたのは 2013 年 7 月。カタログ制作のワークフロー改革がきっかけでした。 櫛谷「年 2 回のカタログ制作では、それまでも Evernote でライターやデザイナーとの素材の受け渡しや情報共有を行ってきましたが、アイテム数やページ数も徐々に多くなり、容量の問題や商品情報のセキュリティも考慮して Evernote Business

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脳科学者・茂木健一郎氏が語る「イノベーションの起こし方」

7 月 11・12 日の 2 日間にわたり「Evernote Days 2014 Tokyo」をお台場の日本科学未来館で開催しました。Evernote が日本で開催するイベントとしては過去最大規模。各業界の第一線で活躍する多彩なゲストやスピーカーを迎えて、「記憶の未来」をテーマにさまざまなセッションが行われました。 20 を超えるセッションの中から、脳科学者 茂木健一郎氏による特別講演「脳とイノベーション」をレポートしていきます。 セッション開始後、茂木健一郎さんが最初に語ったのは、Google が現在実証実験をしているという自動運転の技術でした。自動運転とは運転手がハンドル操作などをすることなく自動で走行できるロボットカーのこと。日本でも研究が進んでいますが、茂木さんは「日本の自動車会社の人と喋っていて心配になった」といいます。 「イノベーションというのは単独の技術ではなく、社会システムや法制度にまで及ぶものなんです。日本の自動車会社の人たちは、自動運転についてまだ自分たちが有利だと考えていますが、それは駐車場のスペースをどうナビゲートするかとか、そういう話なんです。しかし、Google はすでに公道を走って実証実験をしていて、ハンドルがない車も作っている。社会のあり方自体を巻き込んで変えていかないといけないとき、日本がどのくらいイノベーションできるのかが心配です」 では、そんな日本がよりイノベーティブな国になるためにはどうしたらいいのでしょうか。茂木さんは Apple 社を例に挙げ、次のように説明します。 「Apple が伸びたのは、それまでになかった新しい商品カテゴリである iPhone を生み出したから。Evernote もそうですよね。今までになかったジャンルで急速に伸びている。つまり、イノベーションとはブルーオーシャンを作るものなんです。もちろん、細かい各要素はすでに存在していたものかもしれませんが、それらを組み合わせることでブルーオーシャンになったのです。それこそが日本に必要とされていることなのです」 さらに茂木さんは、米国で研究が進んでいる超高速輸送機関ハイパーループを例に挙げ、イノベーションを次のように定義しています。 「ハイパーループが実現することで、ロサンゼルス〜サンフランシスコ間を 30 分で移動できるようになります。これにより、今までにない産業が生み出される可能性もあるでしょう。イノベーションとは”それが生まれることでライフスタイルが変わるもの”であり、”未来感覚”とでも呼ぶべきものなのです」 講演後半では、世界中を飛び回る茂木さんがこれまでに見てきた様々なイノベーションについての解説が行われました。 まずは起業家のルイス・フォン・アーン氏による「ESP ゲーム」。 「イノベーションとは、そこにある問題を解決しようとするものです。たとえばルイス・フォン・アーン氏は、写真にタグづけをしなければならないという課題を解決するために『ESP ゲーム』を考案しました。二人のユーザに同じ写真を見せて”相手がこの写真を見て考えていることを当てましょう”という質問をします。二人の答えが一致したときにだけ、その答えをタグとして採用することにしたのです。これにより、人の手を使うことで妥当なタグをつけることができるようになったのです」 こうした話は私たちユーザの身近にもあると茂木さんは言います。代表的な例が、同じくルイス・フォン・アーン氏が開発したリキャプチャという技術です。リキャプチャとは画面に表示された文字を入力してアカウントを認証する手法。スパムなどを防ぐために、現在では世界中で広く使われています。 「実はあれは文字の認証だけでなく、本の電子化にも協力しているんですよ。古い書籍を電子化するときに、OCR で文字列が判別できないことがよくあります。その判別できない単語をリキャプチャを介して人間に読ませることで、文字列化するのです。実はすでに全世界、数億人単位で本の電子化に協力していたんですね。これこそクリエイティブなイノベーションです」 続いて茂木さんが紹介したのは、IBM が開発した人工知能「ワトソン」。米国の人気クイズ番組「Jeopardy!(ジェパディ!)」に挑戦するために生み出されたシステムで、2011 年 2 月には見事 2 名の著名なクイズ王を打ち負かす快挙を達成しています。ワトソンは自然言語での質問を理解し、本や辞典などのデータから一瞬で答えを導き出しているとのことで、茂木さんはこれを「ある意味、超高度なコピペ」と呼びます。 「論文は文献を参照しながら書くもの。コピペにならないよう我々がナイーブになっていることを、ワトソンを使うと高度にできるんです。IBM はワトソンをディベートに使おうと考えているようですね。賛否両論ある質問を投げると世の中の意見を検索してワトソンが答えを出してくれるんです。進んだ技術は魔法と区別がつかないといいますが、我々はそういうものを手にし始めているんですよ」 こうしたイノベーションは、脳がもともと大好きなものなのだと茂木さんは語ります。 「脳は新しいことが好きで、新しいことに出会うとドーパミンが出るんです。ドーパミンは不確実性が大好きで、できるかどうかわからないからこそ嬉しくなる。確実な報酬と不確実な報酬のバランスをとるのが脳の重要な役目。そのために大事なのは”安全基地”なんです。子どもにとっては母親がそうですね。自分の安全基地は会社かもしれないし、仲間かもしれない。見守ってくれるから挑戦できるのです」 そしてもうひとつ、イノベーションを起こすために重要な概念が「セレンディピティ」です。 「セレンディピティとは”偶然の幸運”に出会うことです。ポストイットなどがまさにセレンディピティから生まれたもの。あれは接着剤を作っていたら、たまたま弱い接着剤ができて、ポストイットが生まれた。A を求めていたのに B に出会う。これがイノベーションです」 しかし、セレンディピティに出会うだけではダメだと茂木さんは言います。大事なのは出会ったことに気づき、それを活かすことなのです。 「セレンディピティに気づくためには3つの A が大切です。Action(行動)、Awareness(気付き)、Acceptance(受容)。新しい価値観を受け入れられるかどうかが重要で、すでに知識や経験やスキルがないと、出会ってもそれがセレンディピティだとわからない。ボーっと生きている人ではセレンディピティを生かせないのです」 ではセレンディピティを生かせるような働き方とは何か。茂木さんはそれを「フロー」という言葉で説明します。 「人はもっとも高いパフォーマンスを出している状態が実は一番楽なんですよ。僕もこれから移動しなきゃいけなくて、休む暇もなく一人ブラック企業状態なんですが、ぜんぜんストレスもない。なんでブラック企業かっていうと仕事が楽しくないから。仕事に学びがあってパフォーマンスに結びついていると人は疲れないんです。自分のペースで仕事ができる人はフロー状態にあるんです。(この話を)労務管理に使っちゃダメですよ?(笑) それは違法ですから。あくまで自分に対しての場合です」 茂木さんは最後に、「Evernote というツールで、ぜひすばらしいイノベーションを起こしてください」と会場に呼びかけ、講演を締めくくりました。 今後も Evernote Days 2014 Tokyo のセッション内容をいくつか紹介していきますので、ご期待ください。