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脳科学者・茂木健一郎氏が語る「イノベーションの起こし方」

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7 月 11・12 日の 2 日間にわたり「Evernote Days 2014 Tokyo」をお台場の日本科学未来館で開催しました。Evernote が日本で開催するイベントとしては過去最大規模。各業界の第一線で活躍する多彩なゲストやスピーカーを迎えて、「記憶の未来」をテーマにさまざまなセッションが行われました。

20 を超えるセッションの中から、脳科学者 茂木健一郎氏による特別講演「脳とイノベーション」をレポートしていきます。

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セッション開始後、茂木健一郎さんが最初に語ったのは、Google が現在実証実験をしているという自動運転の技術でした。自動運転とは運転手がハンドル操作などをすることなく自動で走行できるロボットカーのこと。日本でも研究が進んでいますが、茂木さんは「日本の自動車会社の人と喋っていて心配になった」といいます。

「イノベーションというのは単独の技術ではなく、社会システムや法制度にまで及ぶものなんです。日本の自動車会社の人たちは、自動運転についてまだ自分たちが有利だと考えていますが、それは駐車場のスペースをどうナビゲートするかとか、そういう話なんです。しかし、Google はすでに公道を走って実証実験をしていて、ハンドルがない車も作っている。社会のあり方自体を巻き込んで変えていかないといけないとき、日本がどのくらいイノベーションできるのかが心配です」

では、そんな日本がよりイノベーティブな国になるためにはどうしたらいいのでしょうか。茂木さんは Apple 社を例に挙げ、次のように説明します。

「Apple が伸びたのは、それまでになかった新しい商品カテゴリである iPhone を生み出したから。Evernote もそうですよね。今までになかったジャンルで急速に伸びている。つまり、イノベーションとはブルーオーシャンを作るものなんです。もちろん、細かい各要素はすでに存在していたものかもしれませんが、それらを組み合わせることでブルーオーシャンになったのです。それこそが日本に必要とされていることなのです」

さらに茂木さんは、米国で研究が進んでいる超高速輸送機関ハイパーループを例に挙げ、イノベーションを次のように定義しています。

「ハイパーループが実現することで、ロサンゼルス〜サンフランシスコ間を 30 分で移動できるようになります。これにより、今までにない産業が生み出される可能性もあるでしょう。イノベーションとは”それが生まれることでライフスタイルが変わるもの”であり、”未来感覚”とでも呼ぶべきものなのです」

講演後半では、世界中を飛び回る茂木さんがこれまでに見てきた様々なイノベーションについての解説が行われました。

まずは起業家のルイス・フォン・アーン氏による「ESP ゲーム」。

「イノベーションとは、そこにある問題を解決しようとするものです。たとえばルイス・フォン・アーン氏は、写真にタグづけをしなければならないという課題を解決するために『ESP ゲーム』を考案しました。二人のユーザに同じ写真を見せて”相手がこの写真を見て考えていることを当てましょう”という質問をします。二人の答えが一致したときにだけ、その答えをタグとして採用することにしたのです。これにより、人の手を使うことで妥当なタグをつけることができるようになったのです」

こうした話は私たちユーザの身近にもあると茂木さんは言います。代表的な例が、同じくルイス・フォン・アーン氏が開発したリキャプチャという技術です。リキャプチャとは画面に表示された文字を入力してアカウントを認証する手法。スパムなどを防ぐために、現在では世界中で広く使われています。

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「実はあれは文字の認証だけでなく、本の電子化にも協力しているんですよ。古い書籍を電子化するときに、OCR で文字列が判別できないことがよくあります。その判別できない単語をリキャプチャを介して人間に読ませることで、文字列化するのです。実はすでに全世界、数億人単位で本の電子化に協力していたんですね。これこそクリエイティブなイノベーションです」

続いて茂木さんが紹介したのは、IBM が開発した人工知能「ワトソン」。米国の人気クイズ番組「Jeopardy!(ジェパディ!)」に挑戦するために生み出されたシステムで、2011 年 2 月には見事 2 名の著名なクイズ王を打ち負かす快挙を達成しています。ワトソンは自然言語での質問を理解し、本や辞典などのデータから一瞬で答えを導き出しているとのことで、茂木さんはこれを「ある意味、超高度なコピペ」と呼びます。

「論文は文献を参照しながら書くもの。コピペにならないよう我々がナイーブになっていることを、ワトソンを使うと高度にできるんです。IBM はワトソンをディベートに使おうと考えているようですね。賛否両論ある質問を投げると世の中の意見を検索してワトソンが答えを出してくれるんです。進んだ技術は魔法と区別がつかないといいますが、我々はそういうものを手にし始めているんですよ」

こうしたイノベーションは、脳がもともと大好きなものなのだと茂木さんは語ります。

「脳は新しいことが好きで、新しいことに出会うとドーパミンが出るんです。ドーパミンは不確実性が大好きで、できるかどうかわからないからこそ嬉しくなる。確実な報酬と不確実な報酬のバランスをとるのが脳の重要な役目。そのために大事なのは”安全基地”なんです。子どもにとっては母親がそうですね。自分の安全基地は会社かもしれないし、仲間かもしれない。見守ってくれるから挑戦できるのです」

そしてもうひとつ、イノベーションを起こすために重要な概念が「セレンディピティ」です。

「セレンディピティとは”偶然の幸運”に出会うことです。ポストイットなどがまさにセレンディピティから生まれたもの。あれは接着剤を作っていたら、たまたま弱い接着剤ができて、ポストイットが生まれた。A を求めていたのに B に出会う。これがイノベーションです」

しかし、セレンディピティに出会うだけではダメだと茂木さんは言います。大事なのは出会ったことに気づき、それを活かすことなのです。

「セレンディピティに気づくためには3つの A が大切です。Action(行動)、Awareness(気付き)、Acceptance(受容)。新しい価値観を受け入れられるかどうかが重要で、すでに知識や経験やスキルがないと、出会ってもそれがセレンディピティだとわからない。ボーっと生きている人ではセレンディピティを生かせないのです」

ではセレンディピティを生かせるような働き方とは何か。茂木さんはそれを「フロー」という言葉で説明します。

「人はもっとも高いパフォーマンスを出している状態が実は一番楽なんですよ。僕もこれから移動しなきゃいけなくて、休む暇もなく一人ブラック企業状態なんですが、ぜんぜんストレスもない。なんでブラック企業かっていうと仕事が楽しくないから。仕事に学びがあってパフォーマンスに結びついていると人は疲れないんです。自分のペースで仕事ができる人はフロー状態にあるんです。(この話を)労務管理に使っちゃダメですよ?(笑) それは違法ですから。あくまで自分に対しての場合です」

茂木さんは最後に、「Evernote というツールで、ぜひすばらしいイノベーションを起こしてください」と会場に呼びかけ、講演を締めくくりました。


今後も Evernote Days 2014 Tokyo のセッション内容をいくつか紹介していきますので、ご期待ください。

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