11 月 10 日、渋谷ヒカリエにて Evernote 主催のイベント「Evernote Work Day」を開催しました。本イベントは「Evernote と実現する新しいはたらき方」をテーマにしており、記者会見、ビジネスセミナー、ユーザーミートアップの 3 部構成で進行。新たな取り組みについての発表や、ゲストの方をお招きしての講演の他、パネルディスカッションなども行いました。
本記事では、第 2 部「ビジネスセミナー」の模様をレポートします。
Evernote Business で働き方を変革する
第 2 部のビジネスセミナーでは、Evernote Business を担当している積田が登壇。これまでに Evernote Business を導入いただいた企業の事例を挙げながら、具体的に業務の何が改善したのかをデモを交えて紹介しました。
通所介護・居宅事業を行う株式会社航和では、Evernote Business 導入前、社内のファイルサーバでファイルを共有しており、利用者の家族と情報の共有がやりにくい環境にありました。そこで Evernote Business を導入した結果、利用者のリハビリの改善の記録などを Evernote に記録し、家族や利用者と共有できるようになったといいます。
防災システムを手がける能美防災株式会社では、特許部門で Evernote Business を導入いただいています。導入後には、これまでバラバラになっていた特許に関わるデータを一元管理できるようになり、横断的に検索・活用が可能になったのだとか。
さらに、担当者がノートを見たかどうかを判断するワークフローをタグを使って構築している点もユニークです。やり方は、ノートに見てほしい担当者の名前を入れるだけ。この内容をドラッグ&ドロップしてそのまま名前タグを生成し、閲覧した人は「既読」のサインとして自分の名前をタグを消していくというやり方です。
バイク用品の製造・小売の株式会社クシタニでは、全国に 40 店舗以上あるお店で効率よく情報共有ができるツールが欲しいということから、Evernote Business を導入いただきました。
これまでは店舗に商品をどう並べるかなどの指示を、毎回紙で印刷し、全国の店舗に送っていたというクシタニ。それが、Evernote Business 導入後には遠隔地であっても、Evernote と iPad を使って指示することができるようになり、業務の効率がグッと上がったそうです。
日本経済新聞との提携
事例の紹介後には、今回資本・業務提携を発表させていただいた日本経済新聞社のデジタル編成局 編成部 次長・重森泰平氏にご登壇いただきました。
重森氏は、日本経済新聞について「日経新聞電子版は、毎日新書 3 冊分の情報を出しています。しかし、その情報が必要な人に届いているのでしょうか」と問題提起。「日経新聞と Evernote の連携では、ユーザが作成するノートの内容に応じて、それに関連が深い日経電子版の記事が編集中のノートの下に表示されます」と、連携内容を説明しました。最新ニュースが次々に配信されるのとは違い、ユーザが作成中のノート、進行中の仕事に関わりが深い記事のみが表示されます。重森氏は「日経新聞と Evernote が連携することで、使っている人の文脈に応じて、最適なタイミングで必要な記事を届けられると思います」と述べました。
※ 日経と Evernote の連携は、2015 年初頭に提供開始を予定しています。
吉越浩一郎氏「勝てる会社の方程式」
第 2 部の後半には、トリンプ・インターナショナル(以下 トリンプ社)の元社長・吉越浩一郎氏が登壇。「勝てる会社の方程式」と題した講演を行いました。
吉越氏がトリンプ社の社長に就任したのは 1986 年のこと。それまで 10 年間変わっていなかった売上が、吉越氏が社長になった途端に伸び始めました。専門店、百貨店、スーパーに続き、4 番目の販路として直営店をオープン。2006 年に退社されたときには、直営店は 300 店舗まで増加し、売上は 524 億円を達成。これは、実に世界におけるトリンプ社の売上の 4 分の 1 を占める数字です。
8 時間寝ることを前提に考える
こうした成功の理由として吉越氏が強調するのは、「残業なんてすべきではない」ということ。「8 時間寝る努力をしてほしい。そうすると、仕事は時間内に終わらせないといけなくなりますから」
吉越氏は仕事について、「人生のほんの一部」であり、「ゲームと同じ」であると語ります。
「仕事は自分で作るもの。でもハマりこんではダメ。一歩脇に構えて見て、心身ともに健康でないといけません。ワークライフバランスは自分で作るものなのです」
仕事の反対は”休み”ではなく”遊び”
仕事のベースになるのはまず「体力」、その上に「気力」と「意力」「やる気」があり、一番上に「能力」があるのだと吉越氏は説明します。このピラミッド構造では、すべての土台になるのは「体力」であり、そこが崩れてしまうとすべてがダメになってしまいます。
「日本人に仕事の対極は何かという質問をすると、”休み”と答える人が多いのです。それはなぜか。体力を使った仕事の仕方をしているからです。だからくたびれるし、土日は自宅でゴロゴロしてしまう。欧米人に同じ質問をすると、”遊び”だと答えます。十分に寝て、体力を残して、時間内に仕事を終える。これが日本との違いです」
吉越氏は、日本のサラリーマンの一週間を「滅私奉公型」だと説明します。それ自体は悪いものではありませんが、単に残業して週末に寝溜めしてしまう生活になってしまいがちなのだとか。
「これはサラリーマンの一生でも同じです。仕事は 60 歳になったらできるだけ早く辞めて、人生を楽しむべきではないでしょうか。日本では退職後の人生を『余生』と呼びます。つまり余った人生。そうではなく、余生が『本生』にならないといけないのです」
吉越氏がこうした考えを持つに至ったのは、パートナーの存在が大きいといいます。吉越氏の奥様はフランス人。夜遅くまで仕事をして、飲んで帰ると怒られるのだとか。「家内に言わせると、日本人は家庭を作ることを知らないのだそうです」と吉越氏は笑います。
「日本人は仕事にのめり込んで一生懸命やる。仕事が人生とイコールだと思っている。そうじゃない。仕事は人生のほんの一部です」
とはいえ、仕事をおろそかにするのもいけないと吉越氏は言います。「仕事では絶対に負けてはいけません。そのために大事なのは業務を効率化する仕組みづくりをすることです」
全てをオープンにし、部下に権限を与える
トリンプ社時代、吉越氏が徹底したのは、「部下に権限を与えること」と「報・連・相を排除したマイクロマネージメント」、そして「情報の共有化」でした。
たとえば吉越氏は、極秘情報を除いて秘書にも自分と同じ情報を共有し、自分宛に届いたメールや手紙、書類もすべて読んでいいと指示していたといいます。
「隠すことが一番まずいこと。すべてをオープンにして、その上でディスカッションするべきです」
そうやって決定した事柄については、必ず「デッドライン」を設けて進行することがカギだと吉越氏は語ります。
「デッドラインとは、”いつまでに誰が何をするのか”を決めること。すべての仕事には日付を決め、デッドラインに合わせて解決するのです」
このやり方が、人材を育成することにもつながるといいます。
「明確な仕事の分担と責任が人を育てます。私がよく言うのは、教育ではなく、習育。習って育ってもらうのです。そのためには、何でも話せる企業風土を作り、公平性と透明性、オープンさと率直さがないといけません」
100% の完成度よりもスピードが大事。
こうして仕事の進め方を改善した吉越氏は、トリンプに次々とユニークな社内制度を導入していきます。その一つが「がんばるタイム」。これは昼休みが終わってからの 2 時間、喋らず、電話にも出ず、机にしがみつき集中して仕事を行う制度のこと。このやり方を導入してから、社内では次第に静かな時間が増え、社員は8時間集中して仕事をするようになったのだといいます。
さらに、吉越氏は業務の内容を緊急度と重要度で 4 つに分類。緊急度の高い仕事に追われて、重要度の高い仕事が先送りされがちな状況を改善するためには、 IT 化とマニュアル化を進め、業務の効率とスピードをアップ。それにより空いた時間を「重要度の高い仕事」に回すのだと説明します。
また、ついダラダラしてしまいがちな社内の会議については、「会議はスピードが大事。一つの議題にかける時間は 2 分」だといいます。
「計画は考えた途端に陳腐化するもの。正しい判断は 6 割程度で十分です。バグ(間違い)があれば直せばいいし、100 %を目指そうとするから物事が遅くなるのです。計画はもっと単純にやっていかないとダメです」
この他、「さん呼び運動」や、「ノー残業デー」、「必ず連続 2 週間のリフレッシュ休暇をとること」などの制度を導入し、成果を上げてきた吉越氏。
「今日話したことは、だいたい言われていることをまとめただけ。では何が違うのか。私は徹底して最後までやり抜きました。それが違いです」
最後に「成功するまでやれば必ず成功する」という座右の銘をご紹介いただき、講演は終了となりました。