生きていくうえで、ストレスを感じるのは自然なことです。しかしストレスが大きくなりすぎると、神経症や燃え尽き症候群といった心理的な問題につながりかねません。Mayo Clinic は (英語記事)、仕事による燃え尽き症候群のことを、「仕事に関連する特殊なストレスにより肉体的・精神的に疲弊した状態であり、達成感の低下や個人的なアイデンティティの喪失を伴う」と定義しています。
燃え尽き症候群は、疾患に分類されているわけではありませんが (英語記事)、世界保健機関(WHO)によれば、多くの研究により健康全般や幸福感に悪影響があることが指摘されています。ですから、根本的な原因が何であれ、症状がひどくなる前に対処することが肝要です。では、自分が燃え尽き症候群に陥っていることには、どうすれば気づけるのでしょうか。そして気づいたらどう対処すれば良いのでしょうか。
原因を解明する
燃え尽き症候群の兆候を見逃してはいけません。 燃え尽き症候群を放置すると (英語記事)、過度のストレスや疲労、不眠、悲しみ、怒り、イライラだけでなく、心臓病、高血圧、2型糖尿病などにつながる場合があります。
燃え尽き症候群に対処するには、日々の中にある根本原因を探ることからはじめましょう。原因を特定することは、同じことを繰り返さないための最初のステップです。では、仕事におけるどのような状況が燃え尽き症候群の原因となりやすいのでしょうか。以下に一般的なものをご紹介します。
- 自分の人生を自分でコントロールできていない
- 仕事で求められていることが曖昧である
- 職場の人間関係が機能不全である
- 忙しさや仕事内容が極端である
- ソーシャルサポートが欠如している
ここからは、それぞれの原因を深く掘り下げ、仕事による燃え尽き症候群に対処する方法を見ていきましょう。
コントロールが欠如している
スケジュール、業務量、業務内容など、自分の仕事に影響する決定に関して自分の意見が反映されない場合、「コントロール」の欠如を感じます。職場におけるコントロール(およびその欠如)はさまざまな形で現れますが、特に日々の業務や、職場の人間関係、キャリア形成におけるコントロールの欠如は、長期的な燃え尽き症候群を引き起こすストレスとなりえます。インディアナ大学の研究によると (英語記事)、ストレスが多く、自分でコントロールできないと感じる仕事に就いている人は、そうでない人に比べて不健康で、寿命も短くなるそうです。では、自分がそのような状況にある場合、どうすればよいのでしょうか。
一番大切なのは、コントロールできないことにフォーカスするのではなく、コントロールできることに目を向けることです。何かできることがあれば、その方向へ一歩踏み出します。どうしようもできないことがあれば、それはありのまま受け入れ、自分で変えられることに注力します。
使いこなしのヒント:自分でコントロールできることは、タスクやカレンダーを使って整理すれば、毎日を簡単に効率化できます。業務をタスクに入力して、カレンダーと同期し、自分のスケジュールを自分で管理しましょう。こうすることで、その週やその月の仕事が俯瞰できますし、問題があれば効果的に対処できます。
仕事で求められていることが曖昧である
人は明確な指示や方向性を好むものです。ですから、自分の仕事に何が求められているのか、上司が何を期待しているのかが不明瞭だと、どう頑張れば良いのかわかりません。明確な期待値がなければ、自分がきちんと仕事をできているのかもわからず、ストレスがたまり、やがて燃え尽き症候群になってしまいます。
では、上司があなたの仕事に対する期待値を明確に設定してくれない場合、どうすればよいのでしょう。そんなときは、誰かが指示してくれるのを待つのではなく、自分自身で目標を設定することです。そして、自分の仕事をそれに照らし合わせ、自分が決めた水準を維持するようにしましょう。
職場の人間関係が機能不全である
大人になると、人生の相当な部分を仕事に費やします。ですから、職場の力関係や人間関係、キャリアの目標は、人生における重要な要素になります。職場の機能不全はあなたの人生に直接的な影響を与え、ストレスや燃え尽き症候群の主な原因となりえます。
毒気というのは伝染します。ギャラップ社の調査によれば (英語記事)、離職した社員のうち 50% が、有害な上司やマネージャーが原因で仕事を辞めています。職場における有害あるいは機能不全な人間関係はうつ病のリスクを高めることがわかっています (英語記事)。では、どうすれば機能不全な職場の人間関係を避けられるのでしょうか。
残念ながら、他人の有害な特性を変えることはほとんどできません。ですから、そのような人たちと自分がどのように過ごすべきかを考えましょう。たとえば、際限なく愚痴をこぼす人には、話を聞く時間に自分の中で制限を設けましょう。相手があなたのアドバイスや提案に聞く耳を持たないのなら、丁重にその場から離れるようにします。
また、日々のやりとりとそれに対する自分の反応を、もう一度見直して見るのも良いでしょう。その人が電話やメールをくれたとき、あなたは緊張しますか、それともうれしいですか。うれしい相手との関係を育み、ストレスになる相手との時間は減らすようにします。
忙しさや仕事内容が極端である
ひっきりなしに仕事が続けば、燃え尽きることは避けられず、最終的には仕事だけでなく私生活や健康、幸福感にも影響を及ぼします。一方で、単調で退屈な仕事というのも燃え尽き症候群の原因となりえます。同じことの繰り返しでやりがいのない仕事は、シニシズムややる気の低下を引き起こすからです。
どちらの場合でも、心の健康と幸福感を高めるために生活の中で必要な行動を起こすことが、燃え尽き症候群を抜け出すのに役立ちます。定期的な運動、栄養価の高い食事、良質な睡眠は、自分自身でコントロールできる効果的な要素です。燃え尽き症候群を防ぐのに必要なのは、自分でコントロールできることに集中すること。今月は繁忙期かもしれませんし、閑散期かもしれません。それは自分ではコントロールできないことです。自分にはどうしようもない外的要素ばかりにフォーカスしてしまうと、疲弊してしまうのは避けられません。
使いこなしのヒント: Evernote の同期機能と整理機能を使えば、タスクのやり残したり期限に間に合わなかったりすることがなくなります。さらに、タスクやカレンダーと組み合わせて使えば、一日がスムーズに進み、活力を取り戻すのに役立つはずです。
周囲からのサポートが欠如している
ソーシャルサポートとは、社会における人とのつながりの中でもたらされる支援のこと。いくつかの研究によると、ソーシャルサポートは心身の健康を保つ上で欠かせない要素であるそうです。ソーシャルサポートのネットワークが脆弱だと、ストレスに影響されやすくなります。また、職場や私生活における孤立は、燃え尽き症候群の主な原因のひとつとなっています。心理的・社会的サポートが不足している状態では、仕事へのやる気が低下したりすぐに諦めてしまったりということにもなりがちです。また、他人と衝突しやすくなり、頭痛や倦怠感といった身体的な症状も起こりやすくなります。そのような状況を放置すれば、不安や抑うつといった心理的な症状も悪化してしまいます。そうならないために、日頃から自分のソーシャルサポートネットワークを維持するように心がけましょう。必要であれば、セラピストに相談することも大切です。また、仕事から離れ、リラックスする時間も持つことも非常に重要です。仕事上のストレスで、友人や家族と過ごす時間を妨げられないようにしましょう。
自分にできることは?
ストレス要因は私たちの周囲に常に存在し、なくなることはありません。ですから、自ら行動し、健康的なライフスタイルを維持することが、燃え尽き症候群の最善の解決策です。誰にでもできる以下のステップを実践して、燃え尽き症候群を防止・克服しましょう。
- 休憩を取る:『最高の仕事ができる幸せな職場』の著者ロン・フリードマン氏も、「自分の精神的なエネルギーを取り戻す時間」つまり休憩を定期的に取る必要があると言っています。
- 兆候を知る:燃え尽き症候群の兆候がどのようなものか理解していれば、気付いて防止することができます。物忘れがひどい、皮肉っぽい、疲労感が強いなどの症状がある場合は、燃え尽き症候群になりつつあるかもしれないので注意しましょう。
- 健康的なライフスタイルを維持する:定期的なエクササイズ、良質な睡眠、バランスのとれた食事は、燃え尽き症候群を防ぐ 3 大要素です。その逆は、症状を悪化させます。
燃え尽き症候群は誰にでも起こる可能性があるものです。
燃え尽き症候群を防ぐための手段はいろいろとありますが、それでも燃え尽きてしまうこともあるかもしれません。ですから、燃え尽き症候群から回復する方法を知ることは、予防する方法を知るのと同じくらい重要です。大切なのは、自分がコントロールできないことよりも、できることに目を向けること。職場内外で健全な人間関係を築き、有害な人たちとの時間を制限すること。そして、ストレスが大きくなりすぎたときは、専門家に助けを求めましょう。