Tag 研究者

「Evernoteのおかげで本棚がひとつ空に」――魚類研究者・宮正樹さんの活用法

千葉県立中央博物館で魚類に関する分子進化系統学を研究されている宮正樹さん。海外からも注目を集める研究者の宮さんにとって、Evernoteは仕事でもプライベートでも必須と呼べるツールなのだとか。いったいどんな使い方をされているのでしょうか。 氏名:宮 正樹(みや まさき) 所属:千葉県立中央博物館 ブログ: This is life!   「EvernoteとScanSnapの連携で論文の執筆が楽になりました」 ――お仕事とプライベートの両方でEvernoteを活用されているそうですね。 宮「ええ。まず仕事での用途からご説明します。もっともよく使うのは『メディア』というノートブックに、研究成果が載った記事をクリップする使い方ですね。新聞や雑誌でしたら切り抜きをスキャンして保存、ウェブニュースでしたらSafari(Macの標準ブラウザ)でクリップして保存しています。昔ですとスクラップブックを作っていたと思うのですが、それがEvernoteとScanSnapと組み合わせることで、保存先はEvernoteひとつ。紙のノートを探す手間やどこにいったかわからなくなる、ということがなくなったというのが大きいですね」 ――たしかに紙ものはすぐなくなりますし、何年も経つとボロボロになってしまいますよね。 宮「他にも自分の記事に対するネットの反応などをクリップすることもあります。たとえば今ノートブックの中を見てみると……以前、坂本龍一さんが私の研究についてTwitterでコメントされていたページをクリップしたりしていますね」 ――坂本教授ですか! それは確かに残しておきたくなりますね。 宮「Twitterに限らず、ネットのページは後から探そうとしても難しいことが多いですし、ページそのものがなくなってしまったりもしますからね」 ――お仕事柄、紙や書籍に触れる機会は多いと思いますが、Evernoteはどう活用されていますか? 宮「書籍はScanSnapで電子化してローカルに保存してあるのですが、電子化するとキーワードで検索できるので、必要な部分をコピーしてからEvernoteにペーストしていきます。こうすると、今まではいちいち手でやっていた引用が楽にできるんですよ。特に大きいのは古典を扱うときですね。私は魚類の進化を研究しているのですが、たとえばこの分野の古典であるダーウィンの本なんかは今は電子化されていてPDFでダウンロードできるんですよ。昔だとなかなか手に入らなかった貴重な古典がネットで手に入り、そこから関連する部分を検索してEvernoteに保存するという流れで、論文の執筆はかなり楽になりました」   「仕事で使うソフトのハウツーを保存しておくと便利です」 ――なるほど。他には「ミーティング」というノートブックがありますね。 宮「これは研究チームの学生のレポートだったり、会議の資料などを入れているノートブックですね。こういった資料は紙で配布されるのですが、それをスキャンして入れているわけです。本当は会議のたびに人数分コピーして配るっていうのは紙の無駄遣いなので、PDFで配ってiPadで見ればいいと思うんですけどね」 ――データを紙に印刷して、それをスキャンしてまたデータにするという流れを考えると確かにデータのままでいいですよね。 宮「あとは仕事で使うソフトの使い方やマニュアルを保存したり、記録をとってあります。しょっちゅう使うわけじゃないコマンドなどは忘れてしまうんですよ。Excelの関数やイラストレーターのハウツーなどもここに入れています。テキストだけではなく、画面をそのままキャプチャして保存することもあります。こういった情報はネットで検索すれば出てくるのですが、先ほども言った通りページがなくなることも多いですからね。昔はブックマークするしかなかったのですが、Evernoteでクリップするようになってからは便利になりました」   「プライベートでは旅行とワインの記録として活用しています」  ――プライベートでの使い方も教えていただけますか。 宮「海外旅行が趣味なのですが、そこでEvernoteをよく使っています。Eチケットや、行きたい場所の情報、後はレンタカーのレシートを入れたりします」 ――レンタカー……ですか? 宮「海外でアパートとレンタカーを借りて、毎日自炊するというスタイルで旅行するんですよ。アパートはHomeAwayというサイトで探して、あとはオーナーと直接交渉するのですが、その際にトラブルにならないよう、レシートや予約票をEvernoteに入れておくと便利ですね。もちろん念のために紙でも持っていくのですが」 ――Evernoteでバックアップしておくと安心ですね。 宮「この旅行のスタイルはオススメですよ。旅行で一番高くつくのは食事代と宿代ですが、それがかなり安くなりますからね。また、海外ではよくワイナリーを訪問してワインを試飲するのですが、その際にワイナリーの資料をウェブからクリップして入れておくことが多いですね。他にもインターネット通販で購入したワインの記録や、次に行きたい地方のワインの資料なんかも入れています」 ――ご自宅にワインセラーをお持ちなほどのワイン好きと伺いましたが、Evernoteは宮さんのワインの記録としても役立っているわけですね。 宮「他にプライベートで役立っているといえば、『リフォーム』ノートブックですね。震災を機に自宅をリフォームしたのですが、業者にお願いすると高いので、自分で断熱フィルムや壁紙をはったんですよ。そのフィルム、壁紙の購入記録や、どうやってはったのかという手順、それにサイズなどを保存してあります。もう一度同じことをやろうとしたときにまた採寸しなくていいですし、手順をネットで探す手間がなくなりますからね」 ――たしかにリフォームのようにめったにやらない作業はマニュアル化しておきたいですよね。 宮「マニュアルといえば、家電の取扱説明書なども入れていますね。本の自炊と合わせて、自宅の紙類はかなり減りました。本棚をひとつ空にできたくらいです。研究者には、本に囲まれていたいタイプと、そうでないタイプの2種類あるのですが、私は後者です。これからも紙はどんどん電子化していきたいですね」 ――ありがとうございました!   ◆ 研究での Evernote の活用法について、宮さんが執筆された記事 「ペーパーレスで築く効率的な研究環境 その3:Evernote の紹介」(PDF)がとても分かりやすくまとまっています。ぜひご覧ください。(掲載許可済み)

少数民族言語学研究者・児倉徳和さんが語る Evernote の意義

日本学術振興会特別研究員として、少数民族の言語学の研究をされている児倉徳和さん。フィールドワークや大学の講義、さらにはプライベートでのライフログなど、あらゆる場面でEvernoteをフル活用されているとか。お話を伺う中で、Evernote上級者ならではのテクニックも教えていただきました。 氏名:児倉徳和 (こぐら のりかず) 所属:日本学術振興会特別研究員   「現地でのフィールドワークや大学の講義にEvernoteを活用しています」 ――児倉さんは少数民族言語学の研究をされているそうですね。その調査にEvernoteが役立っているとか。 児倉「ええ。私が研究しているのは、中国新疆ウイグル自治区に居住する民族が話すシベ語という言語です。シベ族は18世紀中期に国境警備のため中国の東北地方から派遣され定住した人々の子孫で、現在シベ語を話す人口は3万人ほどです。私は毎年1回くらいの頻度で現地を訪れてシベ族の人々にインタビューし、書き取った手書きのノートや音声ファイルなどをEvernoteに保存しています」 ――いつ頃からEvernoteを活用されるようになったのでしょう。 児倉「フィールドワークでは2010年から使い始めました。音声ファイルだけでなく、書き起こしたテキストも一緒に入れてあり、後から赤い文字でコメントを書き加えたりもします。他にもちょっとしたビデオクリップやフィールドワークの風景を写した写真なども入れていますね。Evernoteには50MB(注:プレミアムアカウントの場合。無料アカウントは25MB)のファイル制限があるので、その点には注意しています」 ――大学の講義でもEvernoteを使われているのですか。 児倉「大学で音声学を教えているのですが、学生に教材として聞かせる音声のサンプル(クリックで再生)を入れています。使うときはAndroidケータイやタブレットとスピーカーを直接つないで再生していますよ。「教材」というタグをつけて管理しているのですが、Androidの場合、特定のノートやタグへのショートカットをホーム画面に置くことができるので、非常に重宝しています。こうしておけば、関連ノートへワンタッチでアクセスできるわけです」 ――Androidならではの機能ですね。他にはどんなものを保存されていますか? 児倉「何でも入れていますね。いただいた名刺だとか、年賀状だとか、ウェブで公開されている論文だとか……もともと何でも取っておいて溜め込むのが好きなタイプなんですよ。でも紙類っていざ見返そうと思ったときに出てこないですよね。これじゃ取っておく意味がないなと思っていたのですが、スキャンしてEvernoteに入れるようにしてからは捨てていいやって。もちろん捨てられないものもあるんですが、Evernoteでいつでも見られるとなれば、しまい込んでしまえますからね(笑)」 ――たしかに、物をしまい込むとしても、「いつかまた出さないといけないかも」というのと、「もう出さなくてもいい」というのではかなり意識が違いますよね。 児倉「そうなんです。あとは重要なメールをEvernoteアドレスに転送したり、レシートも入れてますよ」 ――レシートは家計簿の補助として使われているのでしょうか? 児倉「最初はそう思ったんですが、それは直接別のソフトに打ち込んだ方が早かったです。ただ別の効果がありまして……」   「Evernoteにレシートを入れていたことで、思わぬ効果がありました」 ――というと? 児倉「以前、妻と化粧品を買いに行ったのですが、そのときに「前に買ったのはこれだったっけ?」と尋ねられまして、試しにお店の名前とだいたいの日付けでEvernote内を検索してみたんですよ。そうしたら前に入れていたレシートが見事に引っかかったんです。Evernoteってすごい!と思いました(笑)」 ――それはEvernoteというよりも、児倉さんのマメさがすごいのでは……(笑) 児倉「そうやって後から検索すると色々わかることもあって面白いです。スターバックスで検索するとレシートがどさっと出てきて、だいぶお金使っちゃってるなとか(笑)経年の変化が見られるのも興味深いです。」 ――レシートって自分の行動記録そのものですよね。話は変わりますが「保存された検索」機能は使いますか? 児倉「使っていますよ。その機能はですね、Evernoteに入れたノートを整理するときに使います」 ――ノートの整理ですか? 児倉「私は一週間に一度、Evernoteを整理するのですが、そのときタイトルやタグをつけずに保存した未整理のノートに、後からタイトルやタグをつけていくという作業をします。「保存された検索」機能を使うと、この作業をかなり効率化できるんです」   「“保存された検索”機能を使うことで、ノートの整理を効率化しています」 ――具体的にやり方を教えていただけますか。 児倉「まず携帯電話で撮った画像つきのノートを検索します。自分でタイトルをつけずにEvernoteに入れると「無題のノート」や「スナップショット」といった仮のタイトルになるので、そのキーワードでタイトル検索します。するとタイトルを付け忘れたノートが抽出されるので、これに「昼食 サンドイッチ」など自分ルールに基づいてタイトルを入れていきます。スキャンした文書についても同じようにします。ここまで終われば、あとは流れ作業です」 ――なるほど……。 児倉「次はin title、つまりタイトルの文字列で検索をかけ、出てきたものに指定のタグをつけていくのです。先ほど「昼食」というタイトルをつけたノートには「昼食」のタグをつけ、「朝食」というタイトルをつけたノートには「朝食」のタグをつけていきます。ここを流れ作業にすることで、整理にかかる労力を減らすことができるわけです。特に私はタグをたくさん使っているのですが、タグはノートブックと違って複数付けられるので便利です。」 ――「保存された検索」の一覧を見ると、かなり細かく指示が書いてありますね。 児倉「この「保存された検索」を上から順番に見ていくだけで、未整理のノートがどんどん整理されていくという仕組みになっているわけですね」 ――「保存された検索」を使った応用テクニックですね。 児倉「Evernoteのおかげで仕事もプライベートも整理が楽になりました。今となってはEvernote以前の生活は思い出せないくらいですが、昔は資料はバラバラに保管していたはずだし、海外に長期出張するときは資料を抱えて行ったものです。今はネットさえつながればいいわけですからね。でも本当に役立っているのはデータのバックアップかもしれません。昨年の震災時、私はこの部屋にいたのですが、調査ノートは置いてハードディスクだけを持って家路についたんです。でも家は遠く、途中で何があるかわからない……そういうとき、Evernoteにバックアップがあるというのは心強いと思いました」 ――たしかに貴重な資料などが震災や津波、火災などで失われることは多いですよね。 児倉「そう、どんなに大切に保管していても、たとえば東京がなくなってしまったらすべて消えてしまいます。たとえば、かつてある先生が書いた博士論文が空襲で焼けてしまったという出来事もありました。特に少数民族言語の場合、調査記録がなくなったらその言語そのものがなくなってしまうという状況もありうるわけです。また、EvernoteのCEO・フィルさんはEvernoteを100年続く企業にしたいと仰ってますから、我々の研究をずっと残すためにもぜひがんばってほしいですね」