著者ダリウス・フル氏は作家、起業家、ポッドキャスターです。生産的な人生を送るためのアイデアを DariusForoux.com で公開しています。
皆さん、究極の生産性ガイドへようこそ。このガイドの目的は 2 つあります。1 つ目は、生産性とは何かを定義すること。多くの人が生産性の真の意味を理解しないまま、生産性向上に取り組んでいるためです。2 つ目は、実証に裏付けられた効果的な生産性向上の方法を紹介することです。
生産性は一度学んだらおしまいというものではなく、継続的に実践していくものです。皆さんの人生にこのガイドがお役に立てば幸いです。
「生産性」の定義
「生産性」は広く誤解されているコンセプトだと思います。その理由は、「生産性」という言葉が、マクロのレベルとミクロのレベルの両方で使われているためです。
ニュース記事などでは、労働力の生産性がよく取り上げられていますね。これは、簡単に言えば全従業員の成果を集計したものです。そのため「9 月は生産性が向上した」などと言ったりするわけですが、これを聞いて混乱してしまう方もいるでしょう。労働力全体の生産性のトレンドは、ある人が生産的かどうかとは関係がないからです。私にとって「生産性」とは、個人レベルで測定するものです。21 世紀に入り、多くの人が自律的に働くようになってきたのでなおさらです。私たちの仕事は機械を操作するだけの単純作業ではありません。私たちは自分の時間と労力を管理する知識労働者なのです。
このことから、生産性には 2 種類あることがわかります。
- 労働力の生産性: 一定期間に従業員全体が産出する製品やサービスの総量
- 個人の生産性: 一定期間に個人が出すアウトプット
前者は個人の力ではどうにもなりませんが、後者は個人で 100% コントロールできます。ですから、CEO やマネージャーやリーダーが、集団の生産性を高めたければ、まずは個人の生産性を高めるところから始めるべきなのです。
個人の生産性について 1 つ注意しておきたいのが、「アウトプット」の質についてです。これは意味のある仕事に取り組んで出した成果でなければなりません。どんなに効率的に多くのアウトプットを出しても、役に立たないものなら意味がありません。適切なアウトプットにフォーカスすることで、本当に取り組むべきことに集中して、キャリア、事業、組織を改善していくことができるのです。
また、生産性を測る場合は、一定の期間を通じて見ることが大切です。月単位が良いでしょう。一貫してアウトプットを出すことこそ、大きな成果につながります。
生産性を高めることの利点
生産性は、経済成長や個人の生活水準(より高い収入、より良い福祉、より多くの自由時間)を表す最も重要な指標(英語記事)です。著名な投資家で慈善家でもあるレイ・ダリオ氏も、動画『How The Economic Machine Works(経済の仕組み)』の中で生産性がいかに大切かを強調しています。
30 分の動画の中で、同氏は経済の仕組みについて説明し、どうすれば豊かになれるかを示してくれています。そのなかでも最も重要なアドバイスは以下のとおりです。
「生産性を高めるためにできることはすべてすること。長期的にはこれが最も効果的である」

生産性を高めることの利点は明らかです。的確に仕事に取り組めば、より多くのより良い成果を上げることができ、「成長」が実現するからです。ただ、生産性の向上には成長以外にも 3 つの利点があります。
- 革新性の向上 (英語記事)— 現代では、暮らしも仕事も常に「変化」し続けてきました。そして、21 世紀に入ってからはその変化のスピードが一段と加速しています。またテクノロジーにより生産性が大幅に向上しました。また逆に、生産性の向上により新しいイノベーションとテクノロジーも生まれています。つまり、生産性が高まれば、革新性も高まるのです。
- 自信の向上 (英語 PDF)— 1952 年に、バーニス・ミルバーン・ムーア氏は、『Educational Leadership』という学術誌に「Self-Confidence For Competence(能力による自信)」という記事を発表しました。この記事の中で同氏は、能力を身に付けることで自信が高まると述べています。何かに秀でれば自分に自信がつくというのは体感的にも納得できますね。生産性を上げることは、能力を開発することでもあるので、つまりそれは結果的に自信につながるのです。
- エンゲージメントの向上 (英語記事)— 仕事に情熱を感じて積極的に取り組んでいれば、その人の仕事に対するエンゲージメントレベルは高まります。
生産性に関する調査結果はたくさんありますが、科学的な調査などなくても、生産性の力は誰でも実感できるものです。自分の生産性を高めてみれば、それが仕事、活力、精神、報酬、幸福などに与える影響をはっきりと感じられるはずです。
生産性に関してよくある障害物
生産性を高めるために最もよく利用されているテクニックを紹介する前に、立ちはだかる障害物について考えてみたいと思います。行く手を阻むハードルを認識しなければ、生産性向上のヒントも使いこなせません。
- 気が散る環境 — 現代の職場には気が散る要素がたくさんあります。オフィスの建物に一歩足を踏み入れれば、会議室や廊下でぶらぶらしたり、コーヒーを飲んだり、ドラマの最新話についておしゃべりしている同僚たちがいます。それだけではありません。個人のデバイスからもひっきりなしに通知が届き注意が削がれます。結果的に、5 分間邪魔されずに 1 つのタスクに集中するのも難しい状況です。
- ライフワークバランス — 人生にはやるべきことがたくさんあります。1 日 10 時間(あるいはそれ以上)働く人も少なくなく、そうなると夜の自由時間は数時間に限られます。しかし、恋愛、家族、日用品の買い出し、公共料金の支払い、エクササイズなど、やることは多いので、すべてをこなせないことも少なくありません。
- 練習不足 — 誰もがもっと仕事に集中したい、プライベートを落ち着いて過ごしたい、有意義な人生を送りたいと思っています。しかし「生産性」を習得できるスキルとして考え、積極的に練習して身につけようという人はどのくらいいるでしょうか。
こうした障害物は、生産性スキルを高めることで解消できます。大切なのは、最高に生産的な自分になるために何が障害となっているのかを把握することです。多くの人にとっては、上記の 3 つが最も大きな障害でしょう。これらを乗り越えると心を決めて、自分の可能性を最大限に発揮する一歩を踏み出しましょう。
広く実証済みの生産性のヒント
自分の能力を最大限に発揮するために、生産性に関する以下のヒントを活用してみてください。どのテクニックも実際に効果を上げているものばかりです。私の記事は、2015 年以降、3 千万人以上に読まれており、読者の方たちから何千通ものメールを受け取っています。以下に紹介するヒントは、こうした読者の方たちにとって最も効果があったものです。
- 自己改善のためのジャーナリング(英語記事)— 生産性向上にジャーナリングは全く関係ないと思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、私に言わせれば、ジャーナルをつけることは、この世で最も強力なツールです。実際、歴史上の人物の多くがジャーナル(日記)をつけていました。これは偶然ではありません。個人的成長のために能力開発を始めるなら、ジャーナリングを始めることをおすすめします。
- ポモドーロ メソッド: 生産性向上のための戦略的な休憩(英語記事)— このメソッドは、綿密に研究されたもので、実践することで即座に集中力を高めることができます。これまで開発されてきた生産性テクニックのなかでもトップクラスのテクニックであることは間違いありません。

- 目標はシステムの代わりにならない、逆もしかり(英語記事)— 目標に対する考え方を変えると、仕事の仕方が変わります。この記事では、一貫した仕事をするためにどのようにシステムを利用すればよいかを説明しています。
- 時間を割り当てて集中力を高める(英語記事)— この記事では、時間を区切ってタスクに割り当て、集中して仕事をする方法を提案しています。私自身、長年この方法を使っています。
- 1 つのことに集中すれば何でも達成できる(英語記事)— 生産性はより多くの仕事をこなすこととイコールではありません。大切なのは意味のある仕事に取り組むことです。そして一度に 1 つのタスクに集中するようにすれば、人間として可能な範囲のことの多くは達成することができます。

- 古代哲学に学んで生産的になる方法(英語記事)— 古代の哲学者たちも生産性について考えていました。現代ならではの問題ではないのですね。この記事では、ソクラテス、プラトン、老子などの生産性に関するアドバイスを紹介しています。
- 自分のエネルギーを管理する方法(英語記事)— 生産性の向上は突き詰めるとエネルギーの管理に行き着きます。多くの人が時間を管理しようとしますが、それは典型的な間違いです。時間ではなくエネルギーを管理しましょう。
- なぜテクノロジーを増やしても生産性が上がらないのか(英語記事)— 多くの人が生産性を向上するためにテクノロジーを活用しています。しかしそこには「収穫逓減の法則」があります。ある点をすぎると、それ以上テクノロジーを増やしても生産性は高まりません。逆に使用するテクノロジーが多すぎると生産性を妨げることになりかねません。
- 私が忙しいのをやめた理由(英語記事)— キャリアアップの途中であっても、落ち着いてすごせる自由時間や休養する時間をしっかりとることで、生産性は高まります。忙しさは罠なのです。

- 生産性が高まる夜の習慣(英語記事)— 朝の習慣は素晴らしいものですが、夜の習慣も大切です。
- マルチタスク依存を止める方法(英語記事)— 同時に複数のことをこなそうとするのは、実はかなり非生産的です。この記事ではマルチタスクを止める方法を紹介しています。
- 1 年に100 冊の本を読む方法(英語記事)— もっと本を読みたい人のためのガイドです。
- 休暇を取ることが仕事を人生を充実させる理由(英語記事)— 1 日に 18 時間働き忙しいことをアピールするのが生産性ではありません。過労死する前に休暇を取りましょう。長い目で見ると、休暇を取ったほうが生産性は上がります。
- 人生の難しい局面で生産的になる方法(英語記事)— 生産性に関するテクニックはたくさんありますが、難しい問題に直面しているときはどうすれば良いのでしょう。この記事では、人生の困難な状況においても生産的であり続けるためのヒントを紹介しています。
- GTD は複雑ではない(英語記事)— 多くの専門家たちが、GTD(やるべきことをやる)、ただそれだけのことを必要以上に複雑にしてしまっています。とにかく座って仕事に取りかかる、シンプルにこれを試してみてください。
私から皆さんに提供できる生産性に関するヒントは以上です。上記の記事に書かれているヒントをすべて取り入れれば、必ず成果が上がるはずです。ただ、一度にすべてを実践しようとはしないでください。悪い習慣を一息にやめるのはいいことですが、新しいことを一度にいくつも試すのはおすすめしません。大変になりすぎてやる気を削がれてしまうからです。その代わり戦略を立てることをおすすめします。最初に改善したいのはどんな点ですか? ガイドを見直しながら、どこから取り組んでいくか決めましょう。
生産性に関するおすすめの書籍
生産性について、私が秀逸だと思った書籍は、面白いことに生産性そのものに関する書籍ではありません。多くは有意義な人生を送ることについて書かれた書籍です。その中から私のベスト 4 をご紹介します。
- 『経営者の条件 』(ピーター・ドラッカー著)— 私がドラッカーファンであることは周知の事実です。この本では、生産性に関してすべての仕事人が知っておくべき知識が実践的な視点から述べられています。この本を読んで、私が仕事に関して学んだ最も重要なことは、「大切なのは何をするかではなく、どんな結果が得られるかであり、それこそが『効率』と『効果』の違いだ」ということです。たとえば 1 時間に 100 通のメールを送るのは非常に効率的な時間の使い方です。しかし、その結果得られるものは何でしょう? 肝心なのはそこなのです。
- 『エッセンシャル思考 最少の時間で成果を最大にする』(グレッグ・マキューン著)—生産性とは正しいことを行うことです。この本は、あなた個人にとって大切なことに集中する方法を教えてくれます。自分自身の望みを知ることで、何をすればよいかが見えてきます。
- 『習慣の力』(チャールズ・デュヒッグ著)—新しい習慣を身に付けることは、人生の質を高める実用的なスキルです。体重を減らす、生産性を高める、定期的に運動する、起業して成功をおさめる・・・。何にせよ、習慣にすることで初めて成し遂げることができます。
- 『天才たちの日課 クリエイティブな人々の必ずしもクリエイティブでない日々』(メイソン・カリー)—歴史に名を残すアーティストやクリエイターたちが、どのように仕事に向き合っていたのか。その日課や生活信条を紹介している書籍です。偉人たちの意外にシンプルな暮らしに驚くかもしれません。
おすすめの生産性ツール・アプリとその使用方法
生産性ツールをうまく使えば、毎日をシンプルにすることができます。時間を節約し、集中力を高め、仕事の質を向上するのに役立ちます。ただ、私は生産性ツールについて話すとき、必ずデメリットにも触れるようにしています。利用するテクノロジーの数を増やしすぎると、逆に生産性が下がる(英語記事)ので注意してください。そのため、以下では厳選したアプリとツールのみを紹介しています。私自身、生産性向上の手段はシンプルに保っておきたい派です。

- ノート — 私自身は A5 サイズ、ソフトカバー、上質紙のノートを好んで使っています。モレスキンがお気に入りです。
- カレンダー — 私は iOS のカレンダーアプリを使っていますが、生産性ツールの中で一番お気に入りなのがこのカレンダーです。主にタスクに時間を割り当てるのに使っています。
- Trello — Trello は、非常に柔軟性の高いプロジェクト管理ツールで、さまざまな用途に利用することができます。私は主にやらなければならないタスクのバックログとして使っています。Trello ではプロジェクト毎に「ボード」を作成し、そこにプロジェクトを完了させるのに必要なアクションを一覧化します。私は毎週時間をとってプロジェクトを更新しています。そうすることで、焦点が定まり、やるべきことが可視化できています。
- Evernote — ノートアプリの中では断トツのアプリです。研究によると、私たちの脳の働きは、Evernote でノート、アイデア、タスクなどが保存される方法と似ているのだそうです。
- RescueTime — 簡単に自分の活動をトラッキングできるアプリです。多くの時間を無意味な活動に費やしていることに愕然とするかもしれません。RescueTime で自分の活動を見える化して、無駄な時間を減らしましょう。
- Grammarly — ここに紹介したものの中で、私が最も頻繁に使用しているツールです。英語でメール以外のものを何か書くときは、このアプリが最高です。特にプレミアムエディションをおすすめします。
- Be Focused — 私が Mac で使っているポモドーロアプリです。ただ別のアプリでも代用可能です。大切なのはタイマーが目に見えること。私自身、ポモドーロタイマーを使っていないときは、つい時間を無駄にしがちです。このアプリを使うことで 1 日に 1 時間は節約できると思います。
- SelfControl (Mac) / FocusMe (Mac & Windows) — 私はこれを使って、注意を削ぐようなサイトをブロックしています。
- Day One — ジャーナリングに紙とペンを使わないときは、Day One を使っています。私の場合は、Day One をジャーナリング専用に使っていて、それにより Evernote をすっきり保っています。
