書籍のデザインや制作のほか、電子出版事業も行う株式会社デジカル。編集プロダクションやデザイン事務所といった既存の枠組みに収まらない幅広い業務内容で注目を集める出版系企業です。多様な業務に取り組む社員の皆さんをつなぐのが Evernote Business。なぜ導入したのか、導入後にどういった効果が生まれたのか。同社の代表取締役社長である香月 登さんにお話を伺いました。
社内の情報をまとめる場所としての Evernote Business
――デジカルはとてもユニークな企業ですよね。編集プロダクション的な機能もあれば、デザイン、電子出版、アプリ開発まで行われています。
香月:ありがとうございます。2003 年に創業してから今年で 13 期目になりますが、出版に関するあらゆるサービスをワンストップでサポートできるのが弊社の強みです。
――香月さんご自身、以前からの Evernote ユーザーであると伺っています。
香月:2009 年頃から個人でずっと使っていましたね。
――個人で使っていた Evernote を、企業としてもお使いいただくことになったきっかけは?
香月:社内では最初、あるグループウェアを使っていました。おかげでオンラインでやりとりをする文化が社内に根付いたのですが、グループウェアですと情報がどんどん流れていってしまうことと、閲覧や検索に時間がかかるので、「情報をまとめる」ということには向いていないなと思ったのです。そこで、社内の情報を溜める場所という位置づけで Evernote Business を一年前から導入し、社員 10名で利用しています。
共有設定の管理が楽なのが Evernote Business の利点
――なぜ Evernote Business に切り替えられたのですか? そのまま個人アカウントの共有機能を社員の方にも使っていただく方法もあったかと思います。
香月:たしかに数人なら個人用でもいいのですが、当時、「今後さらに社員を増やしていこう」と思っていたので、そうなったときの管理の大変さを考えて Evernote Business に移行しました。また、社員にお願いして個人アカウントで Evernote を使ってもらうのと、会社として Evernote Business を使ってもらうのとでは、強制力が違うのです。これが会社のオフィシャルなソフトであるとすることで、仕事として使ってもらえるようになります。
――なるほど。実際に使ってみて、いかがでしたか?
香月:仕事で使うなら、機能面でも Evernote Business の方がよかったですね。個人用ですとノートブックの共有設定でユーザーを追加していく必要がありますが、Evernote Business なら社員全員、またはプロジェクトごとに設定したメンバーへの共有が一気にできるので非常に楽なんです。会社だと退職する社員も出ますから、そんなときに個人用アカウントを使っていると共有設定をいちいち外す必要もあり大変だと思います。
自由なフォーマットで使う週報ノート
――具体的な使い方を教えていただけますか?
香月:まず週報ノートです。社員が毎週、自分のノートブックに週報を入れます。特にフォーマットは決めておらず、その週にやるべきこと、それを達成できたかどうかなどを、自由なスタイルで書いてもらいます。チェックボックスを使う社員が多いのですが、それも誰かが決めたわけではなく、自然にそのスタイルになっていました。社員によってはイラストを添える人もいて、学級新聞のように個性が出るんですよ。週報には先輩や上司がコメントを入れることで、社内のコミュニケーション促進にもなっています。
――内容だけ決まっていて、見せ方は自分で決められるというのは、本作りを手掛けるデジカルさんらしいユニークな使い方ですね。
香月:そうですね。バラエティに富んだ他の人のノートを見ると刺激を受けるのではないでしょうか。
定型化できない仕事の案件管理に Evernote Business が便利
――週報以外では?
香月:案件管理にも使っています。弊社は毎月、たくさんのプロジェクトが同時に走っているのですが、それを社内の担当者が表にして Evernote Business で管理します。顧客情報にはノートリンクを張っておき、別のノートに書いた商談履歴に飛ぶようにしてあります。
――案件管理用の専門ソフトは使われていないのですか?
香月:もちろん、管理部門にきちんとしたデータベースはあります。ですが、作業中に共有する情報のメモとして使うのは Evernote Business がとても便利なのです。書籍の制作ではデザインや中身などが毎回違っていて、定型化できません。以前、工程管理用のシートを作ってみたのですが、機能しませんでした。結局、毎回違う使い方ができる白紙のノートが一番便利なんですよ。Evernote Business はフォーマットの自由度が高く、ちょっとした端書きもそのまま残しておくことができます。タイトルや作業項目など、ある程度共通している項目は定型化していますね。
――出版業の仕事の進め方に、Evernote Business のスタイルが合っているのかもしれませんね。
香月:そうだと思います。自社案件を企画・管理する場合でも Evernote Business を使います。プロジェクトごとにノートを作り、そこに要件や表紙の画像などを入れます。チェックしたら Amazon に登録するのですが、便利なのは電子書籍のフォーマットである epub 形式のファイルも Evernote Business に入れられること。一つのノートの中に、テキスト、画像、epub ファイルなどいろいろなデータが網羅できるのがいいですね。
――Evernote Business を運用する上でのルールはありますか?
香月:プロジェクトごとの権限設定はもちろんありますが、タグなどについては自由にやっています。ルールを決めすぎるとストレスになりますからね。ただ、タイトルの付け方だけは「頭に日付を入れる」などのルールを決めています。
ミスが自然に防止され、中間マネジメントが不要に
――Evernote Business を導入されたことで、どんな効果がありましたか?
香月:ミスが減りましたね。というよりも、自然に防止されている気がします。Evernote Business には必要な情報をすべて入れているので、大事なことを忘れるということもなくなりました。以前、ミスをなくすために、現場のスタッフの話を聞いてプロジェクトの進行状況を把握し、それを私に共有する役目で中間管理職のマネージャを入れたんです。しかし、「人」が管理する体制はあまりうまくいきませんでした。そんなとき Evernote Business を導入したのですが、私自身がプロジェクトの進行状況を確認できるようになったおかげで、マネージャを置く必要がなくなり、結果的にコスト減にもつながりました。
――Evernote Business であれば”又聞き”にもなりませんね。
香月:そうなんです。必ずしも人が管理する必要はなかったということですね。それからもう一つ、副次的な効果ですが、Evernote Business は定型フォーマットがないので、週報にしろ案件管理にしろ必ず文章を考えて書かないといけませんよね。それが”書く”ことの訓練にもなっているような気がします。出版業界にいる私たちにとってはとても大事なこと。結果的にそういったことも生産性の向上につながっていると感じますね。
――ありがとうございました。