自動火災報知設備や消火設備をはじめ各種防災システムのトップ メーカーとして、長い歴史と実績を誇る能美防災株式会社。同社では 2014 年 8 月、自社の特許管理業務に Evernote Business を導入しました。すでに、製品の開発段階から特許の申請準備にいたるワークフローまでを刷新し、将来的には特許事務所など外部との業務連携までを一元管理するべく着々と準備を進めています。
(左から)能美防災株式会社 技術本部 特許法務部長 高橋 敬一さん・
技術本部 特許法務部 松田 直大さん
特許データ管理を効率化するため新しいツールの導入を決意
1924 年の創業以来、企画から開発、製造、設計、施工、メンテナンスまでを一貫して手がける総合防災設備メーカーとして、「防災のパイオニア」を謳う能美防災株式会社(以下、能美防災)。同社にとって、特許管理業務は自社の技術優位性とビジネスの利益を守る上でもっとも重要な業務の 1 つです。このため早くから特許業務のシステム化を進めてきましたが、近年はデータ管理の面で課題を抱えていたと、技術本部 特許法務部 松田 直大氏は振り返ります。
松田「これまでも、特許業務に関する情報を専用のシステムや NAS(ネットワーク・アタッチト・ストレージ)、Microsoft SharePoint などで管理していましたが、社内の複数の箇所にデータが散在しており、情報の横断的な検索や OCR(光学文字認識)が利用できないといった不便さがありました。そこで、これらのソリューションが更新を迎えるタイミングで、課題解決に向けて新たなツールを導入しようと考えたのです」
さっそく具体的なソリューションの検討に取りかかった松田氏に、Evernote Business を勧めたのが、技術本部 特許法務部長 高橋 敬一氏でした。かねてから個人アカウントで Evernote を利用していた高橋氏は、松田氏からの相談をもとにみずからもツールを検討した結果、Evernote Business に行き着いたと語ります。
高橋「機能面で条件を満たしていたことに加え、トータルコストという面でも適格だと考えました。現在の特許業務体制では、従来のようなサーバー・ソリューションを導入するには、初期費用も日常の運用でも負担が大きすぎるのです」
現在の体制ならば社員同士の意思疎通も対面で行えるため、その身軽さを活かせる低コストでフットワークの良いサービスを選ぶべきだと考えたと高橋氏は明かします。またこの他にも、将来的なスマートフォンやタブレットでの利用を見すえたモバイルプラットフォームへの対応も、Evernote Business に対する評価の 1 つでした。
強力な検索機能とセキュリティが特許管理業務には最適と評価
高橋氏からの示唆を受けて、他社製品も含めた比較検討を重ねた結果、松田氏も Evernote Business が今回のシステム刷新の目的に適っていると確信します。
松田「OCR 機能や全文検索など、特許管理業務に必要な条件を十分に備えていると判断しました。特許管理業務では、数年前の情報を探して参照することもしばしばあるのですが、この点でも、Evernote Business の強力な検索機能は魅力的でした」
さらに、特許関連のデータにきわめて高い情報セキュリティが要求されるのはいうまでもありませんが、この面でも Evernote Business は要求レベルを満たしていました。
松田「社内には、すでに Web メールのシステムが導入されていたため、外部サービスを業務に利用すること自体は理解が得られていたと考えられますが、問題はそのデータを預かるサービス事業者側のポリシーです。 Evernote Business は基本的なセキュリティ機能に加え、データはユーザーのものである旨をはっきりと謳っている点が決め手になりました」
実はクラウドストレージ型のサービスの中には、ユーザーが預けたデータの利用や所有の権利が事業者側にあるようなものも少なくありません。Evernote Business は、データの所有権および利用権はすべてユーザーに帰属することをサービス利用規約として明文化している点が、特許関連情報を扱う上で高く評価されたのです。
最終的に同社が構築した新しいシステムは、特許情報管理の専用システムと Evernote Business の 2 本立てによる構成でした。機密の特許情報や手続き期限などは専用システムで厳格に管理し、それ以外の文書や音声、画像などのデータはすべて Evernote Business に集約することで、セキュアかつ柔軟な情報の管理体制が実現しました。
データの一元管理と活用に加え文書管理のワークフローも実現
導入からまだ日が浅いにもかかわらず、 Evernote Business の機能を活用した新しい特許管理業務は早くも着実な成果をあげ始めています。
1 つ目は、やはりデータ検索の効率化です。従来はデータをフォルダ構造で管理していましたが、Evernote Business ならばキーワードで必要なデータをすぐに検索できるため、データを探す時間が大幅に短縮されました。
加えて、データの属性にとらわれない柔軟かつ一元的な管理も可能になりました。特許管理業務では、開発者との打ち合わせが多く行われます。この議事のメモと録音、さらに試作品の写真などもすべて Evernote Business 上に集約しておけば、部内での共有や整理・加工といったデータ活用の自由度が大きく拡がります。
高橋「会社として正式に残す公式書類だけだと、開発過程の細かい記録は残せません。一方、すべてのデータを残しておくのは物理的に難しい。Evernote Business ならば、価値のあるエピソードや前例といった、その中間にあたる部分をうまく補完できると考えています」
Evernote Businessのユニークな活用法として、タグを用いた必読文書の既読管理および承認ワークフローがあります。導入当初、松田氏はチェックボックスを使った未読・既読管理を検討しましたが、実際に試してみると、A さんは読んだが B さんは読んでいないといったケースでは、思うように文書検索ができませんでした。そこで、各メンバーの個人名タグを作り、回覧する文書のノートには、まずメンバー全員の個人名タグを付けることにしました。メンバーは自分の名前のタグを検索すると、自分が確認すべき文書を一覧することができます。そして文書を確認後は自分のタグを消去することで、既読の扱いにします。これにより、文書の回覧状況も一目瞭然となりました。
モバイルによる社外との協業やワークフロー全体の強化を目指す
現在、特許法務部では、将来のモバイルによる Evernote Business 活用に向けて、タブレットの試験導入を開始しています。 松田氏は今後の展望について、「外部の特許事務所との連絡業務が日常的にあるので、主要な数社にも Evernote Business の ID を割り当て、日々のデータのやり取りやノウハウの蓄積に役立てていくことを検討しています」と語ります。
さらに高橋氏は、今回の Evernote Business の導入が、単なるデータ統合だけでなく業務全体の効率化につながることを期待しています。
高橋「現在の利用は、開発者からヒアリングした情報の整理や部内での外部向け文書作成といった社内での業務に限定しています。しかし将来的には、特許事務所への書類整理 依頼・受理といった外部の関係者も含む一貫したワークフローにまで育てていきたいと考えています」
このワークフローが実現すれば業務の流れ全体に一貫性と整合性が生まれ、最終的に大幅な業務品質の向上と効率化が可能になると語る高橋氏。能美防災の優れた技術開発力を、Evernote Business がさらに力強く支えていきます。
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