使い方と事例

「これからは記憶を外部でうまく管理する時代がくる」堀 正岳さんインタビュー

今回、お話を伺ったのは Evernote ライフスタイルアンバサダーの堀 正岳さん。ブログ Lifehacking.jp 管理者であり、ライフタイル、ガジェット、ITについて幅広く執筆されているブロガーです。本業は北極における気候変動を研究する研究者であり理系博士という経歴の持ち主。マルチな才能を発揮する堀さんは、Evernote をどのように使っているのでしょうか。
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氏名:堀 正岳(ほり まさたけ)

blog:Lifehacking.jp

Twitter:@mehori

「Pocket と Evernote の二段構えで情報を整理しています」

――堀さんは初期の頃から Evernote をお使いいただいていますよね。かなり使いこなしているのでは?

堀「それが、そういうわけでもないんですよ。普段はよく使うノートが4、5個。タグが5つくらいで、あとは投げ込むだけというシンプルな使い方なんです。連携アプリもあまり使っていませんね」

――それはちょっと意外でした。

堀「最近のアプリはたいてい Evernote との連携機能を持っていますし、 メールで転送して投げ込むだけでも十分ですからね」

――以前からずっとシンプルな使い方を?

堀「最初の頃は逆に何でも入れようってやっていたんですよ。だけど、やっているうちにあとで使わないものってわかってくるんですよね。これは絶対にあとで使うっていうものは Evernote に入れますけど、どういう意味が出てくるか未知数なものは、最近では Pocket というアプリを使って吟味するようにしています」

――Pocket というとウェブの記事なんかを”あとで読む”ためのアプリですよね。

堀「ええ。情報の間口は RSS とか Tumblr とか広くとっているのですが、そこから気になった情報をまず Pocket にどんどん入れていくんですよ。RSS リーダーは Feedly を使っていますが、スターをつけると自動的に Pocket に入るようにしています。この時点でたとえば100あったものが、10くらいに減ります。そうしたら次は Pocket で内容を読みます。ここで最終的に2くらいまで絞りこみます。今度は IFTTT を使って、Pocket でスターをつけたものが自動的に Evernote に入るようにしているんです。この二段構えで情報を整理するので、結果的に Evernote にはそれほど数は入らないんです。

「Evernote を使うまでは仕事の経験を記憶しておくしかなかった」

――徹底していますね。入れるものはブログのネタやお仕事関連ですか?

堀「そうですね。たとえばブログのアイキャッチで使うストックフォトなんかを入れています。ここで重要なのは、Evernote があらゆるファイルに対応しているということ。中には JPG ではなく、Illustrator のデータも一緒に入れておきたいことがあるのですが、Evernote ならファイル形式が違っていても一つのノートでまとめられますからね」

――お仕事ではどんなものを?

堀「仕事だと資料を入れることが多いですね。たとえば仕事で使うツールのスクリプトでしたり、サンプルプログラムなんかを入れています。これで0から始めずに済むことが増え、毎回数十分は節約になる。仕事がかなり片付きますね。Evernote を使うまでは仕事の経験って、頭の中に入れておくしかなかったんです。必要になったら、「たしかこうだったよな」とか、「たしかここに入れておいたはず」とか言いながら探す必要があったわけです。ぼくも自分の頭の中か、情報カードか研究ノートに入れておく程度でした。それが Evernote ならキーワードを入れてやるだけで取り出せますからね」

――何となくでもキーワードで検索すれば見つかりますよね。

堀「検索といえば、キーワードを入れると「関連ノート」(プレミアム機能)として別のノートが出てくるようになりましたよね。あれも面白い。ピンポイントでひとつのノートだけを呼び出すのではなく、色々紐付いて出てくるところが人間の記憶に近いと思うんです。人間の記憶って5年くらいで消えていくので、そうなってからが Evernote の本領発揮だと思います。Evernote が誕生してちょうど5年くらいでしたよね。これからが Evernote の旨味ですよ」

――たしかに5年も経つと最初の方のノートのことはすっかり忘れてしまっているかも。

堀「そうなんですよ。僕も Evernote に娘の声を録音したものに、文字で一言思いに関するメモを書いているのですが、今聞いてみると以前メモに書いたのがどういう意味なのか思い出せませんから(笑)。人間の記憶ってそんなものなんです。記憶といえば僕は記憶に対する執着みたいなものが強いんですよ」

「記憶力をつける方にがんばるのではなく、外部にその記憶を上手に置いておこうという時代がくる」

――というと?

堀「たとえば歩いていて、風景や色や匂いから触発されて、あのときはあの場所に向かっていて何か悲しい気持ちになっていて……と、どんどん子供の頃の思い出が出てきたりする。そうなったら、その感覚のことを大急ぎで物語にして Evernote に書き込むんです。なぜかというと、それと同じ感覚は最低でも3年から5年、運が悪いと一生よみがえらないものだからです。なので、それ専用のタグ “memory” を作って管理しています」

――他にどんな使い方を?

堀「江戸のウンチクに関してとか、情報カード的に貯めておく “research” ノートブックもあります。実際使うかどうか、何に役立つのかわからないものでも、自分の心に引っかかったものを保存しておく。後から検索でランダムにつながって何かになることもあり、ヒトの記憶に近い広がりが面白いです」

堀「あとは pixiv なんかの2次元イラストが大好きなので、それを専用のアカウントを作って放り込んでいっています。Evernote を使った萌えアーカイブってまだ誰も記事を書いてない気がしますね(笑)」

――たしかに……(笑)

堀「これからの子どもたちが体験することって、オフラインはもちろんだけど、オンライン上での体験も多くなってくると思うんですよ。本なら置いておけるけど、ブログ記事なんかで面白いものを読んでも、次第に記憶があやふやになっていってしまいます。だからもっと記憶力をつけようという方向に進んでいく。でも僕は逆だと思うんです」

――逆というと?

堀「記憶力をつける方にがんばるのではなく、外部にその記憶を上手に置いておこうという時代がくると思うんです。知識が存在することを知っていて、引き出す技術があれば良い。そのときに生きてくるのが、Evernote のようなサービスだと思いますね」

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