使い方と事例

物書き・倉下忠憲さんのデジタルとアナログを融合した知的生産術

『Evernote「超」仕事術』をはじめとする多数の書籍の他、ブログ、有料メルマガなど、”物書き”として精力的に執筆活動を行う倉下忠憲さん。Evernote 知的生産アンバサダーでもある倉下さんの日々尽きることのないアイデアは、いったいどのようにして生み出されているのでしょうか。デジタルとアナログを融合した倉下さん独自の知的生産術について伺いました。

氏名:倉下忠憲(くらした ただのり)

サイト:R-style
サイト:シゴタノ!
Facebook: @rashitaportal

ノート数が膨大になるとログの相転移が起きる。

——本日はお忙しいところありがとうございます。まず倉下さんのお仕事について教えてください。物書きということで様々な文章を執筆されていますよね。

倉下「はい。ブログ「R-style」を毎日更新している他に、毎週発行の有料メルマガと、書籍の執筆などを行っています。内容は仕事術やライフハック、知的生産に関するものが多いですね」

——まさにその知的生産についてお伺いしたいと思っていました。倉下さんは膨大な文章を執筆されていますが、書く内容やアイデアはどのようにして生み出されているのでしょうか。

倉下「私の場合、アイデアは Evernote から生まれています。一番多いのはネタ帳的な使い方ですね。ちょっとしたアイデアを放り込んだり、そうやってストックしておいたネタを引っ張りだして書籍の原稿執筆に使ったりと、短期的なアウトプットから長期的なアウトプットまですべて Evernote を使って行っています。PCを開いている間、Evernote はつねに開きっぱなしで、いわば2番目のOSという存在です。ないと仕事が回りません」

——ネタを放り込むというと、メモをとったりウェブページをクリップしたり?

倉下「メモとウェブクリップが半々くらいでしょうか。数としてはウェブクリップの方が多いと思います。現在は、だいたいウェブクリップのノート数が12,000くらいで、アイデアを入れておく「アイデアノート」が3,500くらいですね。タグづけすることもありますが、大雑把に放り込んでおいて検索に頼ることが多いです。そうすると偶然引っかかったノートから何かひらめいたりもするんですよ」

——過去に自分が入れておいたノートが検索で偶然出てきて、そこから何かひらめくということですか。

倉下「そうですね。ただ、この方法はノート数が10,000あたりを超えてこないと本当の面白さが見えてこないと思います。ノート数が膨大になって、何を保存したか自分でもわからないくらいになると、蓄積していたログの相転移が起きて、自分が思っている以上の価値が出てくるんです」

すべてを Evernote に集約するメリット。

——それでもブログ、メルマガ、書籍と3つのメディアをハイペースで執筆するのはかなり大変なのではないかと思います。特にブログは毎日書かれていますよね。

倉下「ブログのネタは、思いついたものや参考になる元ネタをつねに Evernote にストックしています。さらに、自分が書いたブログ記事もアーカイブとして保存しているんですよ。こうすると、検索したときに関連ノートで過去に書いた記事とアイデアが結びつく可能性があるので。有料メルマガも同じで、過去に書いた記事をすべて保存しています。それに、有料メルマガは連載ものが多いため、先週や先々週の記事を参照する必要がありますから、保存しておくと楽なんですよね。細かいところでは、有料メルマガのテンプレートも Evernote に保存しておいて、それをコピペしてエディタで記事を書くなど効率化しています」

——なるほど。書籍の執筆に関してはいかがですか?

倉下「書籍の場合もやはり、コアとなるアイデアをストックしています。また、書いている原稿も保存していますし、戻ってきたゲラの PDF も保存してあります。書籍の場合は長期のプロジェクトになることが多いので、タスク管理も Evernote で行っていますね。タスク管理に関しては専用ツールの方が便利だと思うので万人にオススメはしませんが、せっかくチェックボックスがあるので、簡易的な管理なら Evernote で十分なんです」

——すべての作業を Evernote に集約しているわけですね。他にも様々なツールがあるかと思いますが、Evernote にまとめることのメリットは何かありますか?

倉下「なんといっても、探す場所が一箇所でいいということですね。タスクも資料も原稿もすべて Evernote に入っている状態なので、他のツールに探しに行く必要がありません。あとは、私は自宅かカフェで仕事をするのですが、Evernote か Dropbox にさえアクセスできれば原稿が書けるというのは助かりますね」


——では、具体的にノートブックの使い分けについて教えてください。

倉下「まず、保存したノートは inbox ノートブックに入ります。これはいわゆる受信箱ですね。ここから、タスク管理に関することは「セルフマネジメント」に、アイデアは「アイデアストッカー」にといった感じに振り分けていきます。「アイデアストッカー」はさらに、「シンクノート」「アイデアノート」「使用済みアイデア」という3つのノートブックのスタックになっています」

——それぞれどのような違いがあるのでしょう。

倉下「通常の断片的なアイデアは「アイデアノート」に入ります。それがもう少し時間が経って使えるものに進化したら「シンクノート」に移動します。逆に使い終わったアイデアは消すのではなく、「使用済みアイデア」に入れておきます。こういうことができるのが Evernote の面白いところですよね。普通は使い終わったものは消すと思いますが、もしかしたら今後また別のアイデアと関連するかもしれない。自分の Evernote ノートをランダムに表示できる EverShaker なんていうアプリもあります」

デジタルとアナログにはそれぞれの良さがある。

——アイデアを Evernote から探し出す方法についてはよくわかりました。では、そうやって取り出した断片的なアイデアを、倉下さんはどのようにして”使えるアイデア”へと育てていくのでしょうか。

倉下「これは発想法の話になるのですが、たとえば何かしらのテーマで本を書くことになったとします。そうすると、私はまず自分の Evernote を検索します。検索対象は「アイデアノート」と、ウェブクリップを保存している「スクラップ」ノートブックです。本のキーワードで引っかかったノートは「進行中プロジェクト」ノートブックに移動して、そこから思いつくことを少しずつ増やしていき、本の形に育てていきます。また、そもそもテーマ自体がふわっとしていて具体性がないときは、アナログなやり方を併用します」

——アナログなやり方というと?

倉下「アイデアトリガーカードですね。「逆から考える」とか「拡大する」とか「俯瞰する」とか、そういった視点を動かすようなキーワードが書かれた紙を持っておいて、ぼんやりとしたテーマを、そうした視点の切り替えで考えるのです。もう一つのやり方はマインドマップです。この場合は、Evernote に集めておいたアイデアを書き出して付箋にして貼り付け、マインドマップを紙に書いていきます」

——あえてアナログにこだわるのはなぜでしょうか?

倉下「デジタルとアナログにはそれぞれの良さがあるからです。デジタルだとどうしてもツールのフォーマットに縛られるんですよ。たとえばマインドマップの場合、センターから線を伸ばしていくのはデジタルでもできますが、途中にイラストを入れたり、箇条書きリストを途中に挟んだりといった、ツールの中にない使い方をすると面倒なことが多いんです。頭の中がまだぼんやりしている段階では何が出てくるかわかりませんから、自由度の高い紙とペンを使うのがベストなんですね。そうやってある程度まとまってきたら、入れ替えたりコピーしたりする作業はアナログでは面倒なのでデジタルに移動させてまとめていきます。Evernote からスタートして、一旦紙へ行ってふわっと広げてから、再びデジタルでぎゅっとまとめる——というイメージです」

——なるほど。デジタルとアナログそれぞれのメリットをうまく利用することが大切なんですね。

倉下「そのためにも、Evernote には気になったものを何でもメモしておくことですね。メモ魔じゃなくても Evernote ならスマホで気軽に記録が残せるから、アイデア力が上がるはず。いつ役立つかはわかりませんが、どこかで面白い出会いが生まれるかもしれない。自分の書籍にも書いたことなのですが、Evernote は未知との遭遇ではなく、既知との遭遇ができるツールなんです」

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