使い方と事例

千葉大学医学部が Evernote を e ポートフォリオに採用、その成果は?

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日本の医療の未来を担う医大生。彼らが学ぶ医学部で Evernote が活用されています。訪れたのは千葉大学医学部附属病院 総合診療科。こちらで教鞭を執る鋪野 紀好(しきの きよし)先生は、1 年ほど前から e ポートフォリオに Evernote を導入されたといいます。

現在にいたるまで 100 人以上の学生が Evernote を活用して学習してきたそうですが、その教育支援効果のほどはいかがだったのでしょうか。鋪野先生にお話を伺いました。

119 名の学生が Evernote を e ポートフォリオとして活用

――Evernote を e ポートフォリオとして導入いただいています。e ポートフォリオとは何でしょうか。

鋪野:実習や学習のログを残して、振り返ることができるようにするためのものです。学生と教員がやりとりするために使うのですが、ここ数年でデジタル化が一般的になってきました。これまでは別のソフトを使っていましたが、2 年前から実験的に Evernote を取り入れてきました。

ここ 1 年ほどの活用の成果については、資料としてまとめて日本医学教育学会で発表しております。

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――これまでに、どれくらいの学生さんがお使いになったのでしょう。

鋪野:実習では学生がグループを組んで様々な診療科をまわります。私の総合診療科では 2 週間ほどの実習期間を設けています。5 ~ 6 名の学生グループが 2 週間継続して Evernote を使い、その後、次のグループがやってきて、また Evernote を使うという流れです。2015 年度は、合計 119 名の学生が Evernote を e ポートフォリオとして活用しました。

――Evernote 以前のソフトには何か課題があったのでしょうか。

鋪野:医学会のスタンダードな e ポートフォリオのソフトとしては、別の教育支援ソフトが使われています。それらに情報を保存して、検索するといったことは可能なのですが、PC でしか閲覧できないという不便さがあったほか、共有の設定も煩雑で使いにくいと感じていました。

7 割以上の学生が実習後も Evernote を継続して利用

――Evernote を具体的にどのように使われているのでしょう。

鋪野:学生には最初に Evernote の使い方を簡単にオリエンテーションします。実習でメインになるのはディスカッションです。チーム全体で患者さんに対する問診をどう行うかや、その理由などについて話し合いを進めます。ディスカッションが終わったら、そのときのホワイトボードを撮影して保存しているようです。

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また、私から単語や症例について調べてくるようにと宿題を出すこともあるのですが、学生は、それに関する資料(テキストや画像、PDF など)を探してきて Evernote に保存し、チームで共有します。学生が保存したノートは私も閲覧し、赤字でコメントを書き込むこともあります。

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ノート作成のルールなどは特にありませんが、タイトルだけは「症例の名前+日付+学生の名前(名前は入れたい人のみ)」というルールを設けています。基本的に無記名なのは、教員に対して「やってます」アピールをしてほしいわけではなく、自発的に学習することを促したいからです。

――Evernote について学生さんの反応はいかがでしたか?

鋪野:継続利用についてアンケートをとったのですが、これまでのソフトの場合、実習が終わった後も学生が継続して使うことはほとんどありませんでした。仕方なく使っていた、という印象です。しかし、Evernote の場合は 7 割以上が継続利用していると回答しています。こんなことはなかなかありません。評判はとても良いですね。

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※「クラウド型フリーソフトを用いた e ポートフォリオ導入による教育支援効果と利用継続性に関する検討」より引用

日本医学教育学会でも注目を集めた Evernote

――Evernote のどんなところが高評価につながったのでしょう。

鋪野:実際の効果として、使い方が簡単で、端末を選ばない、共有機能が優れているため、他の人がどんな資料を保存して使っているのかがわかり、参考になる、検索性が高く、必要なときにすぐ引き出せるなどが挙がりました。そして 1 年にわたって活用した結果、Evernote を利用することで、「自分自身の振り返りや教員・同僚との共有による学習効果が期待できる」ということが実証できました。診療の合間にスマホですばやく確認できる取り回しの良さも魅力だと感じています。

使い方に関しては、私の方で事前にカンファレンスレポートや症例などをノートの作成例としていくつか保存しています。それを見ると使い方のイメージがわくようです。

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――e ポートフォリオ導入の成果を日本医学教育学会でも発表されたと伺いましたが、医療関係者の皆さんの反響はいかがでしたか。

鋪野:ポジティブな反応が多かったですね。医学界も IT 化を進めていますし、医学教育においても教員が一方的に教えるのではなく、学生が自主的に学ぶアクティブラーニングを促進するという方向に動いています。その意味でも Evernote 導入の成果は注目されていると思います。

実際、病院で Evernote を使い始めたという声もありました。現場で役立つツールだということが伝わり、浸透してきていると感じています。

――セキュリティなどについての不安の声はありましたか?

鋪野:それは、ありました。クラウドサービスですから、どこまでアップしていいのかという問題はあります。ただ、研修で Evernote に保存しているのは診療の方法などで、個人情報ではありませんから、現在の使い方なら問題はありません。

学生には最初のオリエンテーションでしっかりとセキュリティについても教育していますし、ノートは教員がチェックしています。何より Evernote 自体のセキュリティがしっかりしていますからね。

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これからの医学界で必要とされるのは、情報をいかに引き出し、活用するかというスキル

――学生さんの面白い使い方などはありましたか?

鋪野:まとめ方などは逆に勉強になることもありましたよ。紙ものは何でも写真に撮って入れていましたし、スマートフォンでスクリーンショットを撮って入れるやり方などは面白いなと思いました。

――学生さんにとっての利便性だけではなく、指導される立場の鋪野先生にとっての使い勝手はいかがでしたか。

鋪野:実は、一年の最後の方にまわってくる学生の方が他の診療科を経験している分、基礎知識が豊富なので、ディスカッションの内容も多岐にわたるんです。

私はノートは毎日チェックしていますが、面白いのは、そういったことも Evernote のノートを見ればわかるんです。つまり、Evernote が評価ツールとしても使えるというわけです。また、学生の考え方や思考の深さなどもノートに表れます。これは答えだけを求める試験ではわかりません。

――今後の医学教育では Evernote のような情報整理・活用ツールが必須になっていくのでしょうか。

鋪野:そう思います。医学教育に限らずですが、学習すべき内容は年々増えています。しかし、人の脳で記憶するのには限界があります。最近では暗記だけでなく、「知識をいかに保存し、引き出し(検索)、活用するか」というスキルが求められていると感じます。

――ありがとうございました。

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