IT 企業に特化した法律サービスを提供する弁護士の藤井総さん。顧問契約を結んでいる企業のうち、90% 以上が IT 企業・IT 関連機関だそうです。ご自身も様々な IT サービスを業務に取り入れているという藤井さんに、Evernote をどのように活用されているのか伺いました。
氏名:藤井 総(ふじい そう)
サイト:弁護士法人ファースト法律事務所
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チャットワーク、Google Apps、Evernote。仕事に欠かせない3つのクラウドサービス
――藤井さんは弁護士業務にも IT を積極的に取り入れているとか。どういったサービスをお使いなのでしょうか。
藤井:まず、私が公認エヴァンジェリスト(普及担当)も務めているクラウド型ビジネスチャットツール「チャットワーク」。それから Google の各種サービスをビジネス用途で利用できる企業向けサービスの「Google Apps」。そして「Evernote」です。この 3 つは業務に欠かせないサービスであり、どれが欠けても困りますね。これらのサービスのおかげで、現在はデバイスに依存することなく、すべてクラウドベースで仕事をすることができています。
――それぞれの使い方を教えていただけますか。
藤井:チャットワークは、主にクライアントとのやりとりに使います。単発のやりとりならメールを使うこともありますが、継続して仕事をするクライアントにはチャットワークを導入していただくようお願いしています。質問などもチャットワークでしてもらい、回答もチャットワークで行います。クライアントには IT 企業が多いので、質問が似てくるんですよ。たとえば「ユーザーから利用規約への同意を取得するための手続きはどうすればいいですか」といった質問ですね。そうするとほぼ同じ回答を返すことになるのですが、そういうときのためにテンプレートを作成しておいて、Evernote に保存しているのです。質問が来たら、Evernote から適切な回答のテンプレートを検索で探し、必要な部分を書き換えてコピー。あとはチャットワークに貼り付けるだけ。スピーディーにやりとりができます。
――Evernoteにテンプレートを保存しておくことには、どんな利点があるのでしょうか。例えばお使いの Google Apps の中のストレージサービス(Google ドライブ)に保存しておくこともできますよね。
藤井:たしかに Google ドライブは、ファイルをまとめて保存しておくには便利なサービスです。ですが先ほどの例のような、ちょっとした質問に対する回答のテンプレを一つ一つファイルにして名前をつけて保存しておいて、質問が来るたびに検索するのって、すごく面倒なんですね。Google ドライブには一応プレビュー機能はあるのですが、そのファイルをダブルクリックしないと表示されませんし、若干のタイムラグがあります。しかも一度に開けるプレビューは、一つのファイルだけです。そのためタイトルで判断して、一つ一つプレビューを開かないといけません。Evernote ならファイルを選択した時点でタイムラグなくプレビューが表示されるので、必要なファイルをスムーズに検索し、テンプレを引用することができます。他にも例えば、新しく契約書を作成するにあたって、以前に別件で作成した契約書を参考にできる場合でも、Google ドライブには仕掛りのもの、バージョン違いのものが全て入っている状態です。一応、最終更新のファイルから順番に並ぶのですが、必ずしも新しいものがベストだとは限らないんですね。そこから検索してベストなものを探し出すのはけっこう大変です。そこで、自分が「これがベスト」と判断したもののみ、Evernote に入れておくことにしたのです。何でも入れる HDD 代わりの Google ドライブと、厳選したテンプレートだけを入れて検索しやすくした Evernote。サービスの特性に応じて使い分けています。
――なるほど。Evernote に何でも入れるのではなく、必要なものだけを入れているのですね。
藤井:何でも入れてしまうと、検索のときノイズになりますからね。基本的に Evernote に入れているものは確実に後から使うものです。使わないものは入れません。書類もすぐに iPhone のドキュメントカメラで撮影して入れてしまいますね。
Evernote は僕にとってのパラリーガル
――スタックとノートブックで整理されているようですが、どういったやり方で整理されているのでしょうか。
藤井:スタックとノートブックで分類しますが、あまりノートブックは増やさないようにしています。分類で頭を悩ませたくないからです。厳密にノートブックを分けるのではなく、おおまかに分けて絞り込めるようにしたら、後は Evernote の検索機能に頼るというやり方です。たとえば「参考」というノートブックには、あまり何を入れるということは決めずに参考資料をすべて入れています。
――タグづけはされていないようですね。
藤井:私にとってタグ付けは意味がありませんでした。スタックとノートブックで十分ですね。検索といえば、関連ノートが表示されるのは便利ですね。そうそう、これがあった! という意外な発見があります。
――徹底してクラウドサービスを使われていますが、それはなぜでしょう。
藤井:ローカルにしかデータがなかったり、ドキュメント(紙)で保管していると、デバイスやドキュメントが手元に無かったり、壊れたり無くした場合に困るからです。クラウドサービスを活用すれば、いつでもどこでも仕事ができます。例えば、出先で PC がなくても iPhone で Evernote アプリを開いてコピー、チャットワークアプリを開いて貼り付け、といった感じで仕事ができます。法律事務所では法律業務をサポートするスタッフのことをパラリーガルというのですが、僕にとってのパラリーガルは Evernote ですね。必要な書類をパッと見つけてきてくれるわけですから。
一つのサービスで完結させるのではなく、組み合わせて使うことで業務効率を上げる
――お仕事以外のプライベートでは、どんな使い方をされているのでしょうか。
藤井:プライベートではよく旅行するのですが、レンタカーや鉄道や飛行機のチケットなどはすべて Evernote に入れています。それから趣味の登山でも、地図を入れておいて、山を登りながら iPhone で現在位置などを確認しています。ネットがつながらなくても、オフラインモードがありますから、何も問題はないですね。登山は荷物をなるべく減らしたいので、余計な紙などは持ちたくないですから。また、今度結婚式を挙げるのですが、式関係の書類などはすべて Evernote で管理しています。必要な書類はすべて Evernote を見れば入っている状態です。
――弁護士というと紙を扱うことが多い仕事というイメージでしたが、藤井さんのデスク周りは驚くほどすっきりしています。仕事とプライベートの両方でペーパーレスを心がけているからなのですね。
藤井:私も以前は机の上に文献を置き、書類はファイリングして整理していました。すごく不便に感じていたのですが、ここ 2 年くらいで IT ツールがどんどん業務で使えるだけのクオリティになってきたのが大きいですね。Evernote とチャットワークと Google Apps。どれか一つで完結させようとするのではなく、それぞれを組み合わせて使うことで、業務効率も仕事のクオリティも格段に上がると思いますよ。