北アフリカに位置するスーダン共和国。内戦や紛争を経て、現在は平和な国づくりが進められています。一方で、医療や学校、きれいで安全な水などの生活環境はまだ十分な状態にあるとはいえません。そんなスーダンを支援する日本の団体が 認定 NPO 法人ロシナンテスです。日本では北九州市に事務局を置き、現地スーダンでも支援活動を続けています。
日本とスーダン――遠く離れた 2 ヶ国をつないでいるツールが Evernote です。どんなふうに使われているのか、なぜ Evernote なのか。ロシナンテス スーダン事務所で働くファイナンシャル・マネージャーの田才諒哉さんにお話を伺いました。
スーダンを支援する NPO 法人 ロシナンテス
――田才さん、本日はよろしくお願いいたします。
田才:こちらこそよろしくお願いいたします。
――まずはロシナンテスについてご説明いただけますか。
田才:ロシナンテスはスーダンで医療支援を中心とした国際協力を行なっている NPO です。今年で設立から 12 年目になります。現地では主に診療所の建設サポートや巡回診療、安全な水を供給するための水施設の建設、国連の WFP(World Food Programme)と現地 NGO と協力して栄養改善プロジェクトのサポートなどを行っています。
――田才さんは普段、スーダン事務所にいらっしゃるのですよね。
田才:はい。スーダン事務所は日本人とスーダン人のスタッフで活動しています。
――田才さんご自身はどんなお仕事をされているのでしょう。
田才:私は各事業のサポートと会計管理を行っています。診療所や井戸、給水所などを建設するプロジェクトの進捗管理のほか、実際に現地を訪問することもあります。
Evernote 採用の理由はスーダンのインフラ・文化事情にあり
――ロシナンテスでは情報共有ツールとして Evernote をお使いいただいているそうですね。田才さんが Evernote を使い始めたのもロシナンテスに入ってからですか?
田才:そうですね。Evernote 自体は以前から知っていたのですが、使い始めたのはロシナンテスに転職した今年 4 月からです。
――他にも情報共有ツールは様々ある中で、なぜ Evernote を選んでいただいたのでしょうか。
田才:これはスーダンの事情にも絡むことなのですが、スーダンは発展途上国ということもあり停電が頻繁に起きます。また、インターネットの接続も不安定です。Evernote はオフラインでも作業できますから、作業がストップしません。
また、日本とスーダンは時差があるため、リアルタイムでの情報共有が難しいのですが、Evernote でしたらノートでやりとりできます。Evernote にログインさえすれば、お互いの状況がすぐチェックできるのです。
――なるほど。でもそれならメールでもよさそうですが……。
田才:スーダン人はあまりメールを見る習慣がないんですよ。紙文化なので PC もあまり使いませんし、Evernote もスマートフォンで使うことが多いです。ロシナンテスでは、スピード感を重視していることもあり、団体内の情報共有でメールを使うことを禁止しています。情報共有は Evernote を使い、連絡は Facebook メッセンジャーを使っています。Evernote にこういう内容を入れたので確認してください、と Facebook メッセンジャーで流して、それでもわからない場合には電話で追加の確認をしています。
タスク、日報、支援現場でのメモなどをすべて Evernote で管理
――よくわかりました。では現場での Evernote の使い方を教えていただけますか。
田才:「全体共有」「ファンドレイジング」「広報」などと業務ごとにノートブックを分けています。業務ごとの状況が知りたいときは検索をかけてノートを確認します。
他にはタスク管理に使っています。朝のミーティング後に日々の業務予定を記録し、どのプロジェクトのためにどこに行くのか、何の資料を提出するのか、何時に打ち合わせに行くのか……そういった内容をスタッフ全員がリストアップしています。日本事務局スタッフは日本語で、スーダン事務所スタッフは英語でノートを作ります。

※日本事務局の朝礼ノートの例

※スーダン事務所の朝礼ノートの例
また、一日の仕事終わりにつける日報も Evernote です。業務終了時間の 30 分前くらいにスーダン人のローカルスタッフに「Evernote の時間ですよ」と声をかけて、PC に向かってもらうようにしています。というのも、朝のミーティングで決まったタスクでも、実際にはさまざまな事情でその通りに行くことの方が少ないので、日報で管理する必要があるのです。

※スーダン人スタッフの業務日報の例
「マニュアル」というノートブックもあり、仕事で使う用語一覧などが載っています。政府機関の略称などをノートで使用することも多いので、わからないときはこのノートブックを見れば誰でも理解できるようになっています。
――田才さんは支援の現場に足を運ぶこともあるということでしたが、そこでも Evernote は使われますか?
田才:そうですね、巡回診療や水施設建設プロジェクトの進捗管理なども仕事の一つなので、週 1 くらいのペースで現場まで視察に行きます。たとえば診療所では、診療所スタッフに今どんな状況なのか、何か困っていることはないかといった話をインタビューして、それを Evernote に書き留めておくのです。紙でメモしてもいいのですが、結局その情報はスタッフと共有しますから、それなら最初から Evernote でメモした方が早いです。

※現場視察メモのノートの例
――ロシナンテスの日本事務所のスタッフとも Evernote を使って情報共有されているということでしたね。
田才:はい。ロシナンテスの拠点は北九州と東京、スーダン、それからオーストラリアにもあります。私も日本とスーダンを定期的に行き来しています。「今どこに誰がいて、何をしているのか」を把握するために、「スケジュール」というノートブックを作成して管理しています。
文化の違いが大きいほどシンプルであることが大事
――田才さん個人としてはどんな使い方をされていますか。
田才:個人としてのタスク管理ノートを作ってチェックリストで管理しています。また、停電が起こってプリンターが使えないことがよくあるので、Scannable をスキャナ代わりに使います。スキャンする書類は政府に提出したりもらったりする書類などが多いですね。後から検索できるのは便利ですし、日本に帰国しているときも Evernote を見ればいいので助かります。書類を持って移動したくないですからね。

※タスク管理のノートの例
――Evernote を使って感じる長所はどんなところでしょう。
田才:UI がシンプルであることです。文化の違いが大きければ大きいほど、シンプルであることが大事だと思います。Evernote はフォーマットがなく、自由にノートを作れるのでローカルスタッフも使いやすいのです。もう、Evernote なしでは仕事ができませんよ。
――ありがとうございました!