同志社大学の博士課程にて、国際労働について研究中の手塚沙織さん。京都と海外を往復しながら論文を執筆する手塚さんは、情報と知識の収集・整理に独自のやり方を用いて効率化しています。仕事と趣味の両方で役立っているという Evernote の活用法を伺いました。
氏名:手塚沙織(てづか さおり)
起業家に薦められて名刺管理のために Evernote を始めた
——まずは手塚さんのお仕事から伺いたいと思います。
手塚「今は同志社大学の博士課程で学生兼メンターをやっています。研究分野は各国の知識労働者の国際労働について。エンジニアや起業家、医者や研究者といった人々が移民政策にどう影響されているのか、どういう影響を与えているのか。また、移民送出国が彼らに対してどのような影響を与えているのかという 3 つの柱を立てて研究を進めています」
——海外にも頻繁に行かれていますよね。
手塚「そうですね。シリコンバレーに滞在しています。現地ではインタビューやコミュニティ、イベントなどに参加して、知識労働者の観察を行っています。Evernote も初期の段階から存じ上げていますよ」
——それではかなり昔から Evernote をお使いに?
手塚「そうですね。最初はシリコンバレーでインド人の起業家に薦められたんですよ。これで名刺を保存したら便利だよって。それでダウンロードしたのが初めてでしたね。最初に見たときは、この象さんカワイイって思ったくらいの印象でしたけど(笑)」
——現在も名刺の管理を?
手塚「それももちろんですが、今は新聞記事を集めるのに使っています。たとえばニューヨーク・タイムズとか BBC とかワシントン・ポストなんかをウェブで読んで、気になる記事をどんどん入れていますね。これができるようになったことで、かなり便利になったんですよ。もう Evernote がなくなったらやっていけません」
検索できないということが考えられない世代
——Evernote のどこが便利だと感じていますか。
手塚「検索ですね。論文を書く際に保存しておいた記事を参照するのですが、そのとき単語で検索すれば関連する記事が出てくるのがすばらしく便利です。何より、写真なども含め、ウェブページをそのまま日付とリンク先も一緒に保存できるのがいいですね。ネットのニュース記事って、後から見ようとしても課金しないと見られなくなったりするじゃないですか。そうでなくても、いつまでもサイトが残っているかどうかもわかりません。ですから、必要だと思ったら片っ端から保存しています。Evernote は魔法のスクラップブックなんですよ」
——保存した記事はタグで整理されるのでしょうか。
手塚「保存時にはタグはつけたりつけなかったりです。つけなかったノートに関しては、後日キーワードで検索して出てきたときにタグづけしていきます。最初からつけて保存することもあるので、そのときによって色々ですね」
——やはり検索が一番の活用ポイントになっているのですね。
手塚「そうですね。私は検索世代なので、検索できないというのが考えられないです(笑)。たとえば Google で検索しても、新しい記事が優先的に出てきますよね。古い記事は埋もれてしまうことが多いし、自分が過去に見た記事かどうかもわからない。Evernote なら自分が一度は選んだ記事が入っているわけですから、いわば好きな本を書庫につめこんで、そこに司書がいる感じ。検索精度はかなり高くなります。20 世紀は大量生産・大量消費の時代でしたが、今は細分化する個人のニーズに合わせた商品が増えてきています。検索も同じで、Google や Yahoo! ではできなかった個人への最適化が Evernote ならできるのです」
情報は記録が目的ではなく、未来に活かすために保存
——お仕事以外ではどんな使い方を?
手塚「趣味だと美容関連のノートには『美レシピ』というタグを使っています。これには『メイク』とか『ダイエット』とか『アンチエイジング』などのタグがつくものが含まれていて、ほしいメイク用品などのページを保存したノートです。買うとき名前を忘れていても、パッケージの写真があるとスマホですぐ確認できて便利だと思います」
——買った記録などはつけていませんか?
手塚「つけないですね。というか、いわゆる記録の類は Evernote には入れていません。気になったコスメ記事とかダイエット記事とか、将来ほしいものやすぐ役立ちそうな情報ばかりですね」
——他にはどうでしょう?
手塚「私は海外ドラマが好きなんですが、見ているときにわからなかった英単語や表現を保存しています。単語集みたいなものでしょうか。Evernote のノートを画面左に出しながら、右で海外ドラマを再生させて見ることで、英語の勉強をしています」
——写真などは保存しないのでしょうか。
手塚「写真は iPhoto で管理していますね。Google+ や Facebook に入れてシェアすることもあります。他にもファイルのバックアップには Dropbox、論文管理は Papers を使っています」
——ソフトを分けるのはなぜでしょうか。
手塚「Evernote の検索精度を上げるためですね。私は Evernote を検索して活用するので、そのときのノイズはできるだけ減らしたいのです。だから、Evernote に入れるものと、入れるとノイズになるものを、大枠で分けてソフトを使い分けているのです」
——ただ、仕事以外にも趣味のコスメ情報などは入れているわけですよね。その部分の使い分けは?
手塚「研究関係とコスメ情報くらい違っていると、Evernote が勝手に整理してくれるという感覚なんです。キーワードで検索すれば、関係のないノートは出てきませんからね。あとは出てきたノートを流し読みしながら、内容を思い出していきます。自分がどんなことに興味を持っていたのかわかるのが楽しいですよ。ただ、研究や趣味の内容であっても、紙をスキャンして入れることはないですね」
——それはなぜですか?
手塚「紙なのかウェブなのかは、はっきり分けているんですよ。Evernote はウェブの情報を入れる、同時に自分の意識に入れるためのものと決めているんです。そうすることで、「論文はあそこを探せばいい、ウェブの記事なら Evernote を見ればいい」といった感じにすぐ探せます。大切なのは、その情報がどこにあるのかを決めて、覚えておくことですから」
——なるほど。お話を伺っていると、手塚さんは過去のログをためるのではなく、未来に役立つものを入れておくというスタンスなんですね。
手塚「たしかにそうかもしれませんね。そういえばログ的なものはとっていません。ウェブの記事は論文を書くことを見越して入れていますし、コスメも将来役立つだろうなという情報を入れています。ジムでランニングの参考になる走り方を入れるのも、すぐ試すため。過去にとっておいたものが今につながっていると感じます」
——そういう意味では Evernote がタイムカプセルみたいですね。
手塚「本当にそうですね! Evernote を使えば使うほど、自分が何に興味を持っているかもわかりやすくなりますし、手放せないツールになりました」