先週 6 月 24 日、Evernote はベータ版を初めて一般公開してから 9 周年を迎えました。サービス開始以来、Evernote は累計で 2 億人以上のユーザに利用され、世界中で作成されたノートは 50 億以上を数えます。私が普段考えているのは Evernote の将来のことばかりですが、この機会を利用して、Evernote の過去やルーツを振り返りたいと思います。その話をするうえで、優れたビジョンと先見の明によりこの会社を創業したステパン・パチコフ氏 (Stepan Pachikov) の存在が欠かせません。
ステパンのアイデアが、どのように世界を変えたかを少し説明させてください。日々の生活で、みなさんはどこかでステパンの発明に触れている可能性があります。
- タッチペンを使って、直接パソコンまたは携帯端末に手書きでサインしたことはありますか?手書き文字をコンピュータに認識させる技術は、ステパンの発明です。
- アメリカに住んでいる方なら、人が書いた手紙を郵便で受け取ったことがあるかと思います。手書きの手紙を自動的に読み取り、正しく仕分けする技術は、ステパンが生み出したものです。
- また、彼は VRML(仮想現実モデリング言語)のパイオニアの 1 人でもあるので、みなさんが日々楽しんでいる VR ゲームにも貢献していると言えます。
2002 年に、ステパンは Evernote を作ることを思いつきました。頭が賢い彼でも、自分の記憶力に限界を感じていたからです。彼が夢見たのは、思考と同じスピードで情報やアイデアを記録すること、それは言い換えれば自分の脳のコピーを作ることでした。彼は私に、自分の限界よりも常に一歩先を目指す気持ちを忘れてはいけない、と教えてくれました。彼はいつも人の一歩、二歩先を行っています。ステパンは真のパイオニアなのです。私は、彼自身が熱中していることや、彼が考える Evernote の 5〜10 年先の姿についての話を聞くのが大好きです。
私はこの場をお借りして、ステパンに感謝の気持ちを伝えたいと思います。製品の品質にこだわる重要性を教えてくれてありがとう、と。「最高の製品が最後に勝つ。」というのが彼の口癖ですが、本当に正しいと思います。そして私は彼の好奇心にも刺激を受けています。私にいつも考えさせ、そんな私を信じてくれることに感謝しています。さらに、世界中にこれだけ多くの熱心なユーザがいて、Evernote を囲むコミュニティ誕生のきっかけを作ってくれたことに感謝します。
亡きロビン・ウィリアムスさんの言葉を引用すれば、人には誰だって「少し狂気じみたところがある。それを失ってはいけない」。どんな状況においても子供のような冒険心や想像力を絶やさず、そして突拍子もないアイデアを具現化して便利な製品を作ってしまうステパンに感謝の気持ちを伝えたいと思います。彼のような人間が、世界を変えられるのです。
Evernote CEO
クリス・オニール
ステパンの人生と Evernote 誕生についてご興味がある方は、こちらの記事(英語)も合わせてご覧ください。